【薬剤師の調整給・調整手当は危険!?】前職年収考慮の求人に応募する際の注意点
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前職の年収を考慮すると言われた薬剤師

現在転職活動中なのですが、前職の年収を考慮すると言われました。年収の試算表を出してもらったら、そこには調整給と書いてありました。

この調整給って一体どういうものなのでしょうか?

  • 転職後の給与明細の調整給って何?
  • 調整手当が毎年減っているのはなぜ?
  • 調整給が0になってしまった……

あなたもこのようなことで疑問を持ったことはありませんか?

pharma

この調整給や調整手当の意味が良くわからないという方もいるのではないでしょうか。中途入社の薬剤師に支給されることが多い調整給・調整手当について解説します。

本記事の内容
この記事を読むと次のことがわかります。

自己紹介

pharma_di(ファマディー)

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全国に300店舗以上運営している大手調剤薬局チェーンの大型店舗で管理薬剤師をしています。

管理薬剤師歴は15年以上。現在は転職サイトの担当者と連絡をとりつつ、中途薬剤師の採用活動にも携わっています。
【私が薬剤師採用のために連絡を取っている≫おすすめの薬剤師転職サイト

面接をした中途薬剤師は軽く100人を超えました。

私は過去2回転職をしていて、1回目は大失敗。ブラック薬局で過ごした数年間は地獄そのもの。

ブラック薬局に入らない方法、そこから脱却した方法を他の薬剤師にも役立ててほしいと思い、当サイト「薬剤師のための転職ブログ・ファマブロ」を始めました。

このサイト内の記事は『過去2回の転職経験』と、『現在の薬剤師採用業務の経験と知見』を基に全て私が1人で書いています。

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結論
転職や人事制度変更の時に出てくる調整給や調整手当。毎年少しずつ減っていって最終的には0になる手当です。

調整給や調整手当が高すぎる場合には一度よく考えたほうが良いでしょう。見かけの年収が高くても、長い目で見たら損かもしれません。

調整給・調整手当とはいずれ無くなる給与のこと

転職後の調整給や調整手当は一定期間が経過すると0円になるので注意が必要です。

いまよりも年収が下がってしまったらその薬剤師が入社してくれない。

最低でも、前職と同じ給料を出してあげたいが、うちの会社の給与水準と比べると少し高い……。

こんな時に年収が下がってしまうことを防いでくれるのが『調整給・調整手当』です。

薬剤師の中途採用の求人で以下の言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか?

  • 年齢や経験・スキルなどを考慮し当社規程により決定
  • 前職の年収を考慮
  • 要相談

大手調剤薬局の中途採用薬剤師の募集要項を見てみます。

  • 【日本調剤】月給250,000円〜500,000円(各種手当含む)※経験を考慮し当社規定による
  • 【そうごう薬局】年収356万円~738万円
  • 【クオール薬局】月給261,000~415,000円 ※経験等を考慮いたします。
  • 【イオン薬局】(全国)月給353,500円~550,000円※ご経験、能力に応じて当社規定により優遇

他社の薬剤師求人も同様に「当社規定により優遇」、「当社規定に準ずる」、「給与は能力と経験により応相談」といった言葉並びます。

あなたが中途でこれらの薬局に転職をしようとしても、いったい給与がいくらなのか、この表記だけではわかりませんね。

中途で採用した薬剤師(転職してきた薬剤師)の給料がどのように決まるのかは以下にまとめましたのでご覧ください。

転職希望者の現在の年収がその会社の給与水準よりも高いとき、自社の給与水準どおりだと年収が下がってしまうことになりますのでその薬剤師を採用することは難しいでしょう。

そこで、給与を上乗せするために「調整給」または「調整手当」という形にして増額分を支給する提案をします。

例を挙げて比較してみましょう。

現在あなたはA薬局で働いていて月収は40万円とします。そして現在転職活動中です。

いろいろ比較した結果最終候補として、B薬局とC薬局が残りました。

このどちらに転職しようか悩んでいます。

B薬局とC薬局からそれぞれ給与の試算表をもらいました。

前職給与等を考慮する薬局(調整手当有)とない薬局(調整手当なし)の比較

前職給与等を考慮する薬局(調整手当有)とない薬局(調整手当なし)の比較

現在A薬局に勤めるあなたの月収40万円。B薬局とC薬局から給与の提示それぞれ受けました。

試算1

  • A薬局(現在の月収):40万円
  • B薬局(前職の給与・経験の考慮有) 提示給与42万円(調整手当2万円含む
  • C薬局(前職の給与・経験の考慮なし)提示給与41万円(調整手当無し)

さて、あなたはBとCどちらの薬局に転職すると金額的にお得でしょうか?(毎年の昇給額はどちらの薬局も1万円、その他手当や賞与の額は同じとします。)

入社1年目(転職時)の薬剤師給料

転職時のあなたの月収は、B薬局では42万円、C薬局では41万円です。

  • B薬局(前職の給与・経験の考慮あり):入社時月収40万円+調整手当2万円=月収42万円
  • 薬局(前職の給与・経験の考慮なし):入社時月収41万円

入社2年目(転職1年後)の薬剤師給料

2年目になり、あなたは1万円昇給しました。

  • B薬局:40万円+調整手当1.5万円1万円(昇給)=月収42.5万円
  • C薬局:41万円+調整手当 0円+1万円(昇給)=月収42万円

B薬局は調整手当が2万円から1.5万円に減少しています。それにより実質的な昇給額が5,000円に抑えられています。

入社3年目(転職2年後)の薬剤師給料

B薬局:40万円+調整手当1万円1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)=月収43万円(

C薬局:41万円+調整手当   0円+1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)=月収43万円

調整手当がさらに減額されて1万円になってしまいました。そのため、B薬局では実質的な昇給額は5,000円となります。
B薬局とC薬局で月収が並びました。

入社4年目(転職3年後)の薬剤師給料

B薬局:40万円+調整手当0.5万円1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)=月収43.5万円

C薬局:41万円+調整手当      0円+1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)=月収44万円

 

調整手当がまだあるので、B薬局の昇給額は5千円です。

ついにC薬局の方が月収が高くなりました。

入社5年目(転職4年後)の薬剤師給料

B薬局:40万円+調整手当 0円1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)1万円(5年目昇給分)=月収44万円

C薬局:41万円+調整手当 0円+1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)1万円(5年目昇給分)=月収45万円

B薬局の調整手当が無くなりました。

入社6年目(転職5年後)の薬剤師給料

B薬局:40万円+調整手当 0円1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)1万円(5年目昇給分)1万円(6年目昇給分)=月収45万円

C薬局:41万円+調整手当 0円+1万円(2年目昇給分)1万円(3年目昇給分)1万円(4年目昇給分)1万円(5年目昇給分)1万円(6年目昇給分)=月収46万円

 

7年目以降同様です。

 

前職考慮ありのB薬局と前職考慮なしのC薬局ではどのくらい給料の差が出たでしょうか。

 

月収を単純に12倍して年収を出して計算してみます。

調整手当ありと無しで起こる年収差

試算1

  • A薬局(現在の月収):40万円
  • B薬局(前職の給与・経験の考慮有) 提示給与42万円(調整手当2万円含む
  • C薬局(前職の給与・経験の考慮なし)提示給与41万円(調整手当無し)

試算1の結果
初めの2年間こそ提示された金額が多かったのでお得でしたが、4年目以降ではC薬局の方が年収が多くなった。

少しB薬局の条件を変えてみましょう。

試算2

B薬局(前職の給与・経験の考慮有) 提示給与43万円(調整手当2万円含む)

C薬局(前職の給与・経験の考慮なし)提示給与41万円(調整手当無し)

するとどうでしょう。結果はこのようになりました。

調整手当がある場合とない場合での年収比較

4年目まではB薬局の方が年収が高くなりますが、5年目以降はどちらの薬局も同じ年収となります。

試算2の結果
調整給の60万円分だけB薬局の方が年収が多くもらえた。

自社の給与水準と転職者の給与水準にずれが生じている場合に支給される調整給や調整手当ですが、支給されること自体は悪いことではありません。

2つ目の条件のように結果的に得をすることもあります。

あくまでも今回の例は仮のもの。

調整手当が毎年0.5万円ずつ減るとは限りませんが、この考え方で基本的には間違いありません。

いずれにせよ、調整給や調整手当は時期が来れば0になるということだけはしっかりと理解しておきましょう。

調整給・調整手当が0になったのはその会社の給与水準に一致したという意味

調整給・調整手当が0になったのはその会社の給与水準に一致したという意味

調整給や調整手当が無くなったことが何を意味するか。それは、その会社の給与水準に一致したということです。

言い換えれば、前職の経験やスキルを考慮していた部分が完全に消えたということ。

このタイミングで別の会社に転職して『前職の経験やスキルを考慮』をまたもらうという手もあります。

【薬剤師の調整給・調整手当は危険!?】前職年収考慮の求人に応募する際の注意点(まとめ)

【薬剤師の調整給・調整手当は危険!?】前職年収考慮の求人に応募する際の注意点(まとめ)

  • 調整手当は昇給の前払い的なもの。最終的には0になる。
  • 調整手当が0になったという事は、その会社の給与水準に一致したということ
  • 見た目の年収に釣られると、調整手当の存在により結果的に損をしてしまう可能性があるので注意が必要

ここまで調整手当を説明してきましたが、ちょっと難しかったかもしれません。

転職の際は、前職の経験やスキルを考慮してくれればうれしいが、それが調整手当という形での考慮だと長期的に見た時にあまり得をしないという結果になることもあります。

前職の経験やスキルを考慮してくれるかでどうかで転職先の薬局を決める必要はないということ。

年収をもっと増やしたいなら、給与交渉をしてもらってください。

薬剤師転職サイトの担当者に待遇面の交渉をしてもらうのです。

薬剤師転職サイトの担当者に交渉をお願いすれば、調整給とは違った形での給与上乗せを勝ち取ることも可能です。

転職をする際には年収も大事ですが、それ以外の希望条件をおろそかにしてはいけません。