
整理は一通り終わったつもりです。でも、薬局の中はまだ何となく散らかっています。置き場所を決めても、忙しくなるとすぐ元に戻ってしまいます。薬局の整頓は、何から始めればよいのでしょうか?
結論から言うと、薬局の整頓は「誰でも迷わず取れて、同じ場所に戻せる状態」を作ることです。
整頓は、見た目をきれいにする作業ではありません。必要な物を、必要な時に、必要な数だけ、すぐ使える場所に置くための取り組みです。
薬局では、散剤スプーン、分包紙、薬袋、軟膏板、輪ゴム、ハサミ、電卓、発注札、記録用紙など、毎日使う物がたくさんあります。
朝はきれいだった調剤台が、昼前にはメモ・輪ゴム・薬袋・空箱でいっぱいになる。発注札を作ったのに、いつの間にか札が戻ってこない。応援薬剤師に「分包紙はどこですか?」と毎回聞かれる。
そんな状態に心当たりはありませんか。
自分だけが片づけて、自分だけが注意しているように感じると、整頓そのものが嫌になりますよね。
でも、整頓が続かないのは、あなたの意識が低いからとは限りません。戻す場所が決まっていない薬局では、どれだけ真面目な人でも崩れます。忙しい薬局ほど、個人の頑張りだけでは限界があります。
本記事では、薬局の5S活動における整頓の意味、3定管理、置き場所の決め方、表示ルール、発注点管理、整頓を続けるための確認項目まで、現場で使う場面を想定して解説します。
薬局の整頓は「誰でも30秒以内に取り出せて、同じ場所に戻せる状態」を作ること。
定位置・定品・定量を決め、表示と発注点を見える場所に置くと、探す時間・戻し忘れ・発注漏れを減らせます。



私は管理薬剤師歴25年で、採用100名超・面接500人以上、チェーン薬局と小規模薬局の両方で教育と現場改善を担当してきました。
私が見てきた薬局でも、整頓が崩れる場所はだいたい「戻す場所が曖昧」「表示が小さい」「発注点が人の記憶頼み」のどれかでした。
薬局の5S活動における整頓とは
薬局の整頓は、必要な物の住所を決めて誰でも同じ動きができる状態にすること。


薬局の5S活動における整頓とは、必要な物をすぐ使えるように、置き場所・置き方・表示を決めておくことです。
5S活動は、整理・整頓・清掃・清潔・躾の順で進めます。整頓は2番目のステップです。整理で不要な物を減らしたあと、残った必要な物に「住所」を付ける工程と考えるとわかりやすいです。
5S活動全体の流れを先に確認したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
≫薬局の5S活動とは?整理整頓で調剤ミス・残業・発注漏れを減らせる7つの理由


薬局の整頓で大切なのは、見た目の美しさよりも、誰が入っても同じように動けることです。
いつもの薬剤師だけがわかる状態では、整頓とは言えません。新人薬剤師、事務スタッフ、応援勤務の薬剤師、久しぶりに入るパート薬剤師でも、同じ場所から同じ物を取り出せる状態にしておく必要があります。
たとえば、分包紙の補充場所が人によって違う薬局では、忙しい時間帯に「どこにありますか?」という確認が増えます。散剤スプーンの戻し場所が決まっていない薬局では、調剤のたびに引き出しを開けて探す時間が発生します。
薬袋、輪ゴム、マーカー、印鑑、電卓も同じです。一つひとつは数秒のムダでも、午前中のピーク時には現場の流れを止めます。
そして、そのしわ寄せは患者さんにも出ます。探し物が増えれば、投薬までの時間が伸びます。スタッフの焦りも増えます。小さな乱れが、薬局全体の落ち着きを奪うこともあります。
だからこそ、整頓では次の3つを明確にします。
- どこに置くか
- どのように置くか
- 誰が見てもわかるように、何を表示するか
この3つが決まると、薬局内の確認が減ります。「あれ、どこですか?」と聞く回数が減り、患者さんの前で落ち着いて動ける場面が増えていきます。
整頓前に確認すべきこと|整理が終わっていないと失敗する
薬局の整頓は、不要物を減らしたあとに置き場所を決めると失敗しにくい。
整頓を始める前に、まず整理が終わっているかを確認しましょう。
不要な物が残ったまま整頓すると、置き場所が足りなくなります。余白がなくなり、仮置きが増え、せっかく決めたルールがすぐ崩れます。
これは薬局でよくある失敗です。
「とりあえずラベルを貼れば何とかなる」と思って始めても、棚の中に不要物が残っていれば、必要な物を置く場所がありません。結果として、別の場所に押し込む。仮置きする。誰かが移動させる。元の場所がわからなくなる。
こうなると、整頓したはずなのに、前より使いづらい薬局になってしまいます。
薬局でよく残っている不要物には、次のようなものがあります。
- 期限切れの掲示物
- 使っていない備品
- 古いマニュアル
- 過去のキャンペーン資材
- 誰も使っていない書類トレー
- 目的が曖昧な予備ボックス
- 使用頻度が低いのに、一番取りやすい場所を占領している物
こうした物が残っている状態では、本当に必要な物の住所を作れません。
整理がまだ不十分だと感じる場合は、先にこちらの記事を確認してください。整頓は、整理で不要物を減らしてから進める方が失敗を防げます。
≫薬局の整理できてますか?整理すべきは物と情報(データ)【5S活動】


整頓前には、次のチェックをしておくと安心です。
- 不要な物が棚や引き出しに残っていないか
- 期限切れの掲示物・資料・マニュアルが残っていないか
- 同じ物が複数箇所に分かれて置かれていないか
- 使用頻度の低い物が取りやすい場所を占領していないか
- 今後も使うか判断できない物に保留期限を決めているか
整頓は、物を並べ替える作業ではありません。必要な物だけが残った状態で、初めて置き場所を決める作業です。
完璧を目指さなくても大丈夫です。まずは「この棚には必要な物だけが残っている」と言える場所を1つ作るところから始めましょう。
薬局の整頓は3定管理で考える
薬局の整頓は、定位置・定品・定量を決めると現場の迷いを減らせる。
薬局の整頓は「定位置・定品・定量」の3定管理で考えると、ルールを決めやすくなります。
整頓が崩れる薬局では、「どこに」「何を」「いくつ」置くかが曖昧になっていることが多いです。
逆に言えば、この3つを決めるだけで、現場の確認はかなり減ります。
- 定位置:どこに置くかを決める
- 定品:何を置くかを決める
- 定量:いくつ置くかを決める
定位置|どこに置くかを決める
定位置は、物の住所です。
住所が曖昧だと、忙しい時間ほど「とりあえずここ」が増えます。最初は一時的なつもりでも、誰かがそこに別の物を置き、また別の人が違う場所に移動させます。こうして、元の場所がわからなくなります。
定位置は、「この辺り」ではなく、「この棚の上段」「この引き出しの左側」「散剤台の右手前」まで決めます。
薬局では、動線と使用頻度をもとに置き場所を決めます。
- 毎日何度も使う物は、目線から胸の高さに置く
- 利き手側にあると作業が早い物は、作業台の近くに置く
- 使用頻度が低い物は、一番取りやすい場所を空けるために奥へ移す
- セットで使う物は、同じ棚や同じトレーにまとめる
たとえば、散剤スプーンや分包紙を散剤台から離れた場所に置くと、調剤のたびに移動が発生します。薬袋を受付と調剤室の両方に曖昧に置くと、補充漏れや在庫差が起きます。
定位置は、見た目よりも動きの少なさを優先して決めましょう。
定品|何を置くかを決める
定品は、その場所に置いてよい物を決めることです。
定品が曖昧な棚は、すぐに「何でも置き場」になります。
たとえば、外用剤の予備置き場に、事務用品、古い掲示物、余ったパンフレット、誰のものかわからないメモが混ざっていく。最初は少しだけだったのに、気づくと棚全体が雑多な置き場になる。
これでは、必要な物を探すたびに手が止まります。戻す側も「ここでいいのかな」と迷います。
備品棚なら、ハサミ、テープ、輪ゴム、クリップ、マーカーなど、置いてよい物を明確にします。書類棚なら、どのファイルを置くのか、最新版だけを置くのか、過去資料は別の場所に保管するのかを決めます。
定品を守るには、棚やボックスに「何を置く場所か」を表示することが欠かせません。
定量|いくつ置くかを決める
定量は、置く数を決めることです。
薬局では、物が多すぎても少なすぎても困ります。多すぎると棚があふれ、奥の物が埋もれます。少なすぎると、忙しい時間帯に欠品して現場が止まります。
「多めに置いておけば安心」と思う気持ちはよくわかります。欠品で焦った経験があると、つい余分に置きたくなりますよね。
でも、置きすぎると今度は棚が見えません。奥にある物が残り、先に買った物が後回しになります。棚卸しのたびに数える量も増えます。
薬袋、分包紙、輪ゴム、軟膏容器、シロップ瓶、投薬瓶、プリンター用紙などは、定量を決めておきましょう。
定量を決める時は、次の点を確認します。
- 1日にどれくらい使うか
- 納品まで何日かかるか
- 保管場所に無理なく入る量か
- 欠品した時に業務が止まる物か
- 置きすぎた時に期限切れや棚の圧迫につながる物か
定位置・定品・定量が決まると、スタッフの記憶や気づきに頼る場面が減ります。棚を見れば、置く場所・置く物・置く数がわかる状態に近づきます。
薬局で整頓すべき場所と具体例
薬局の整頓は、患者さんから見える場所と作業回数が多い場所から始める。
薬局の整頓は、患者さんから見える場所と、作業回数が多い場所から始めるのがおすすめです。
最初から薬局全体を完璧に変えようとすると、途中で疲れます。忙しい現場では、整頓のための時間をまとめて取ることも簡単ではありません。
まずは「ここが変わると明日の仕事が少し楽になる」と思える場所から始めましょう。ハサミを探す回数が減る、分包紙の予備を聞かれなくなる、受付の見た目が落ち着く。小さな変化で十分です。
受付・患者さんから見える場所
受付周辺は、患者さんの目に入りやすい場所です。
パンフレット、掲示物、筆記用具、保険証確認用のトレー、番号札、消毒用品などが乱れていると、薬局全体が雑に見えます。
患者さんは、調剤室の中まで細かく見ているわけではありません。でも、受付周辺の乱れには気づきます。最初に手をつける場所として、受付はとても向いています。
- パンフレットの種類と置く数を決める
- 期限切れの掲示物を外す
- 患者記入用のペンの本数を決める
- 受付トレーの用途を表示する
- 患者さんから見える場所に私物を置かない
受付が片づくと、薬局の印象が変わります。スタッフ側も「見られている場所が片づいている」という安心感を持てます。
調剤台・散剤台
調剤台や散剤台は、整頓の変化がすぐ見える場所です。
ここが乱れていると、調剤のたびに迷います。探す時間が増え、動作が増え、焦りも生まれます。
特に午前中のピーク時は、少しの探し物でも負担になります。散剤スプーンが見つからない。分包紙の予備がどこか分からない。軟膏板がいつもの場所にない。こうした小さな迷いが、現場のリズムを崩します。
調剤台・散剤台では、次のような物の置き場所を固定します。
- 散剤スプーン
- 薬包紙
- 分包紙
- 軟膏板
- ヘラ
- 秤量紙
- 輪ゴム
- マーカー
- ハサミ
- 電卓
- 印鑑
ポイントは、セットで使う物を近くに置くことです。
散剤を量る時に使う物、軟膏を混合する時に使う物、一包化で使う物など、作業単位でまとめると動きが減ります。
薬袋・分包紙・投薬瓶の置き場
薬袋、分包紙、投薬瓶、シロップ瓶などは、欠品すると業務が止まりやすい物です。
「薬はあるのに、薬袋がない」「分包紙の予備が見つからない」「投薬瓶のサイズが足りない」。こうした状況は、現場の焦りにつながります。
これらは、置き場所だけでなく定量と発注点も一緒に決めましょう。
- 薬袋のサイズごとに棚を分ける
- 分包紙の予備は開封済みと未開封を分ける
- 投薬瓶は容量ごとに表示する
- 発注点を棚に貼る
- 最後の1箱を開けたら発注札を回す
「誰かが気づいたら発注する」では、発注漏れが起きます。発注点と発注方法を置き場に表示しておくことが大切です。
外用剤・シロップ・備品棚
外用剤やシロップ類は、形や箱の大きさがばらばらで、棚が乱れやすい場所です。
箱の向き、ラベルの向き、予備在庫の置き方が人によって変わると、探すたびに手が止まります。棚ごとにカテゴリを分け、ラベルの向きをそろえましょう。
備品棚も同じです。ハサミ、テープ、電池、文具、プリンター用紙、掃除用品などが混在していると、必要な物を取り出すたびに棚をかき分けることになります。
棚単位で「何を置く場所か」を決め、ボックス単位で表示すると、戻す場所で迷いません。
書類・マニュアル・掲示物
薬局では、物だけでなく情報の整頓も重要です。
古いマニュアル、新しいマニュアル、手順書、施設基準関連の掲示物、行政通知、メーカー資料などが混在すると、必要な情報にたどり着くまで時間がかかります。
「最新版はどれ?」「この掲示物はまだ必要?」「この手順書、誰が更新したの?」という確認が増えると、業務が止まります。
書類やマニュアルは、次のように管理します。
- 最新版だけを現場に置く
- 古い版は保管場所を分ける
- ファイルの背表紙を統一する
- 電子データの保存場所も決める
- 掲示物には掲示期限を入れる
薬局の整頓は、棚や引き出しだけではありません。情報の置き場所も決めることで、確認ミスや伝達漏れを減らせます。
置き場所・置き方・表示を決める手順
薬局の整頓は、使用頻度・動線・置き方・表示・見直しの順で進める。


薬局の整頓は「使用頻度で分ける→動線に合わせる→置き方を決める→表示する→見直す」の順で進めます。
いきなりラベルを貼るだけでは、整頓は続きません。先に置き場所と置き方を決め、その内容を表示に落とし込みます。
手順1:使用頻度で分ける
まず、物を使用頻度で分けます。
- 毎日何度も使う物
- 毎日使う物
- 週に数回使う物
- 月に数回使う物
- ほとんど使わないが保管が必要な物
毎日何度も使う物は、最も取りやすい場所に置きます。月に数回しか使わない物は、少し離れた場所で問題ありません。
使用頻度を無視して置き場所を決めると、動線が悪くなります。よく使う物ほど近く、あまり使わない物ほど奥へ。この判断だけでも、探す時間は減ります。
まずは、ハサミ・テープ・輪ゴムの置き場所だけでも決めてみてください。小さな備品ほど、置き場所が決まると現場のストレスが減ります。
手順2:作業動線に合わせて置く
次に、作業動線に合わせて置き場所を決めます。
薬局では、調剤、監査、投薬、発注、在庫補充、受付対応など、複数の動線が重なります。物の置き場所が動線と合っていないと、スタッフ同士がぶつかり、移動も増えます。
たとえば、散剤台で使う物は散剤台の近くに置きます。投薬時に使う資料は投薬カウンターの近くに置きます。発注に使う札や記録用紙は、在庫を確認する場所に置きます。
「どこに置けば見た目がよいか」ではなく、「どこに置けば動きが減るか」で考えましょう。
手順3:置き方を決める
置き場所が決まったら、置き方も決めます。
同じ棚に置いていても、平積みなのか、縦置きなのか、箱の向きはどうするのかが人によって違うと、すぐ乱れます。
薬局では、次のような置き方まで決めておくと、戻す時の迷いが減ります。
- 箱のラベル面を正面に向ける
- 開封済みと未開封を分ける
- 先入れ先出しになる向きで置く
- ボックスの中に入れる数を決める
- セットで使う物は同じトレーにまとめる
- 重ねすぎない
「ここに置く」は決まっていても、「どう置くか」が決まっていないと崩れます。薬局の整頓では、場所だけでなく置き方までルール化しましょう。
手順4:表示で誰でもわかるようにする
置き場所と置き方を決めたら、表示を付けます。
表示は、整頓を保つための道しるべです。ラベルがなければ、忙しい時間ほど「いつもの人の記憶」に頼ることになります。
表示では、次の点を統一します。
- ラベルの位置
- 文字の大きさ
- 表記ルール
- 略語の使い方
- 色分けの意味
- 発注点の書き方
表示は、細かすぎると読まれません。逆に、曖昧すぎると役に立ちません。
「外用剤」「軟膏容器」「薬袋 Mサイズ」「分包紙 予備」「発注札」など、誰が見てもわかる表記にします。薬局内だけで通じる略語を使う場合は、略語一覧を作り、応援薬剤師にも見せられる場所に置いておきましょう。
手順5:見本棚を作る
整頓を続けるには、見本棚を1か所作るのがおすすめです。
見本棚とは、ラベルの貼り方、ボックスの使い方、発注点表示、置き方の基準がわかる棚のことです。
新しい備品を追加する時や、別の棚を見直す時に、見本棚を真似すればルールがぶれません。
新人や応援勤務の薬剤師にも、「この棚のルールで全体をそろえています」と説明できます。口頭説明に頼らず、見ればわかる状態にしておくことが大切です。
毎回同じ説明をするのは、地味に負担です。見ればわかる棚を作っておくと、教える側も教わる側も楽になります。
発注点と発注札で過剰在庫・欠品を防ぐ
薬局の整頓は、発注点と発注札を見える化すると過剰在庫と欠品を防げる。
薬局の整頓は、在庫管理と切り離して考えられません。
置き場所を決めても、必要以上に詰め込んだり、発注点が決まっていなかったりすると、棚はすぐ崩れます。
「足りなくなったら困るから多めに置く」「誰かが気づいたら発注する」。この運用は、一見ラクに見えます。でも実際は、過剰在庫と欠品の両方を招きます。
特に、薬袋、投薬瓶、分包紙、軟膏容器、シロップ瓶、プリンター用紙、掃除用品などは、発注点を決めておくと、誰が見ても発注が必要か判断できます。
在庫管理や発注点の詳しい考え方は、こちらの記事で解説しています。本記事では、整頓に関係する部分に絞って説明します。


発注点を置き場に表示する
発注点は、担当者の記憶に頼らず、置き場に表示しましょう。
たとえば、次のように表示します。
- 薬袋Mサイズ:残り2束で発注
- 分包紙:最後の1箱を開封したら発注
- 投薬瓶100mL:残り1袋で発注
- プリンター用紙:残り1箱で発注
- 軟膏容器:残り1袋で発注
発注点が見える場所にあれば、誰が見ても同じタイミングで判断できます。
「少なくなったら発注」では、人によって判断が変わります。「残り何個で発注」まで決めることが大切です。
発注札を使う
発注漏れを減らすには、発注札が役立ちます。
発注札には、品名、発注点、発注数、発注方法、担当者を記載します。最後の1箱を開けたら発注札を所定の場所に移動する、というルールにすると運用が明確になります。
管理薬剤師として見てきた限り、発注札が続いている薬局は、札そのものの置き場所まで決まっています。「札を作る」だけでなく、「札をどこへ動かすか」「発注後にどこへ戻すか」まで決めることが重要です。
発注札の流れは、次のようにシンプルで構いません。
- 最後の1箱を開封する
- 発注札を発注担当者のトレーに入れる
- 担当者が発注する
- 納品後、発注札を元の場所へ戻す
この流れが決まっていれば、「誰かが発注していると思った」というミスを防げます。
発注漏れが起きた時に、誰が悪いかを探す薬局もあります。でも本当は、個人を責めるより、誰でも気づける形に変える方が現場は穏やかになります。
詰め込みすぎない
整頓では、スペースに余白を残すことも大切です。
棚いっぱいに詰め込むと、取り出すたびに手前の物をどかすことになります。戻す時も乱れます。納品直後に入りきらず、床置きや仮置きが発生する原因にもなります。
置き場には、少し余白を残しましょう。
余白はムダではありません。取り出すため、戻すため、残り数を見るために必要なスペースです。



現場では「ここに入るだけ入れておこう」が崩れる原因になります。定量を超えて置かないルールに変えると、棚卸や発注確認の負担がかなり減ります。
整頓が続かない薬局に多い失敗例
薬局の整頓が続かない原因は、意識不足よりルールや表示の弱さにある。
整頓が続かない薬局には、いくつか共通する失敗があります。
ここで最初に伝えておきたいのは、整頓が続かないからといって、スタッフの意識が低いとは限らないということです。
戻す場所が遠ければ、忙しい時に戻せません。表示が小さければ、人によって置き方が変わります。発注点が決まっていなければ、気づいた人だけに負担が偏ります。
忙しい時間帯に「ちゃんと戻して」だけで回すのは限界があります。崩れた場所には、ルールを直すヒントがあります。
失敗1:仮置き場を作ってしまう
仮置き場は、一見便利です。
しかし、薬局では仮置きが常態化します。「あとで戻す」が忙しさで後回しになり、いつの間にか仮置き場が物置になります。
どうしても一時置きが必要な場合は、ルールを決めましょう。
- 一時置きは1か所だけにする
- 置いてよい時間を決める
- 終業時には必ず空にする
- 担当者を決める
- 一時置きが必要になる理由を見直す
基本は、仮置きを作らないことです。作る場合でも、放置される物置にしないことが大切です。
失敗2:表示が小さすぎる
ラベルを貼っていても、小さすぎると読まれません。
棚の奥に貼ってある、文字が小さい、似た表記が多い、色の意味がわからない。このような表示は、整頓の役に立ちません。
表示は、作業中に自然と目に入る位置に貼りましょう。棚の手前、ボックスの正面、引き出しの外側など、のぞき込まなくても見える位置が基本です。
忙しい時ほど、人は細かい表示を読みません。だからこそ、ひと目でわかる表示にしておくことが大切です。
失敗3:略語や表記が人によって違う
薬局内だけで通じる略語は便利ですが、人によって使い方が違うと混乱します。
たとえば、外用剤、外用、外、外薬など、表記が揺れると応援勤務の薬剤師や新人は迷います。
表示名は統一しましょう。略語を使うなら、薬局内で一覧化しておくと安心です。
失敗4:作った人しかわからない
整頓ルールを作った本人だけがわかる状態も危険です。
「なぜここに置くのか」「どのタイミングで発注するのか」「誰が補充するのか」が共有されていないと、担当者が休んだ瞬間に崩れます。
整頓は、属人化をなくすための活動です。作った人だけがわかる整頓ではなく、誰が見ても同じ行動に移れる整頓を目指しましょう。
失敗5:見直し日を決めていない
薬局の物や業務は少しずつ変わります。
新しい備品が入る、処方内容が変わる、在宅対応が増える、スタッフが入れ替わる。この変化に合わせて整頓ルールも見直す必要があります。
見直し日がないと、最初は整っていても少しずつ崩れます。月1回のミニ確認と、半期ごとの全面見直しを設定しておきましょう。
崩れた場所は、誰かを責める場所ではありません。ルールを直すヒントが見つかる場所です。
整頓を続けるためのチェックリスト
薬局の整頓は、チェックリストで定期確認すると崩れた場所を早く直せる。
整頓は、チェックリストで定期的に確認すると、崩れた棚をその場で直せます。
薬局内で月1回、10分だけでも構いません。棚や作業台を見ながら、崩れている場所を確認しましょう。
チェックの目的は、できていない人を探すことではありません。戻す場所が遠い、表示が小さい、定量が現場に合っていない。そうした原因を見つけるために行います。
- 必要な物だけが置かれている
- 不要物や期限切れ資料が残っていない
- 物の定位置が決まっている
- 置いてよい物が表示されている
- 定量が決まっている
- 発注点が表示されている
- 30秒以内に取り出せる
- 誰でも同じ場所に戻せる
- ラベルの位置と表記がそろっている
- 開封済みと未開封が分かれている
- 先入れ先出しの順番で置かれている
- 仮置きが放置されていない
- 終業時に調剤台や机の上が空になっている
- 見直し日が決まっている
チェックする時は、「なぜ崩れたのか」を見てください。
戻す場所が遠いのか。表示が小さいのか。定量が多すぎるのか。人手不足で片づける時間がないのか。原因によって、直す場所は変わります。
「ちゃんと戻して」と注意するより、「戻す場所が現場に合っているか」を見直す方が、薬局は変わります。
まずは1棚だけで大丈夫です。明日、定位置・定品・定量を書き出してみましょう。
整頓が決まると清掃・清潔も進む
薬局の整頓が決まると、清掃範囲が明確になり清潔の基準も作りやすい。
整頓が決まると、次の5S活動である清掃・清潔にも進めます。
置き場所が決まっていれば、清掃する範囲がはっきりします。物が床や机に出しっぱなしにならないため、掃除前に物をどかす時間も減ります。
反対に、整頓ができていない薬局では、清掃の前に片づけが必要になります。毎回そこから始まると、清掃そのものが面倒になります。
整頓は、次の工程を楽にする準備でもあります。
清潔の考え方や維持するコツは、こちらの記事で詳しく解説しています。


5S活動は、1つずつ独立しているようでつながっています。整理で不要物を減らし、整頓で置き場所を決める。すると清掃に入る前の片づけが減り、清潔の基準も作れます。最後に、躾として薬局内に同じルールを根づかせていきます。
最初から完璧にしなくて大丈夫です。1つの棚、1つの作業台、1つの備品置き場から始めましょう。
整頓しても改善しない薬局で働き続けるべきか
薬局の整頓が改善しない時は、職場全体のルールや人員体制も見直すべき。
ここまで、薬局の整頓の進め方を解説してきました。
ただ、現場によっては、スタッフが努力しても整頓が続かないことがあります。
たとえば、次のような薬局です。
- 改善提案をしても聞いてもらえない
- 人員不足で片づける時間がまったくない
- 管理者が薬局内のルール作りに関心を持っていない
- 本社が現場改善に投資しない
- 発注漏れや在庫差異が起きても原因を見直さない
- 新人や応援薬剤師が毎回同じことで迷っている
- 整頓ルールを作っても、守る人だけに負担が偏っている
このような職場では、個人の努力だけで改善するのは難しいです。
整頓が続かない原因が、単なる片づけ不足ではなく、職場全体のルール不足や人員不足にある場合もあります。
特に、探し物・発注漏れ・在庫差異・片づけ時間の不足が残業につながっている場合は、職場環境そのものを見直す視点も必要です。薬局の残業が多い原因や、転職前に確認すべきポイントはこちらでも解説しています。
≫薬剤師の残業理由|多い薬局の特徴と少ない薬局を転職前に見抜く


もちろん、すぐに転職を考える必要はありません。
まずは、できる範囲で置き場所を決める。表示をそろえる。発注点を見える場所に貼る。小さな改善から始めてみる価値はあります。
それでも改善提案が通らず、ミスへの不安や業務負担が大きいままなら、今の職場を続けるべきか一度整理してみてもよいタイミングです。
転職必要度診断では、今の職場に残って改善を待つ段階なのか、環境を変える選択肢も考える段階なのかを確認できます。
「整頓ができない自分が悪い」と抱え込む前に、職場のルール・人員体制・改善提案を聞いてくれる空気も含めて、一度客観的に見直してみてください。
今の職場を続けるべきか迷っていませんか?
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まだ転職を決める必要はありません。まずは、今の薬局で改善を待てる状態なのか、それとも職場選びの条件を見直す段階なのかを分けて考えましょう。
すでに職場を見直す気持ちが強いなら、次は「どんな相談先が自分に合うか」を整理しておくと安心です。
今すぐ薬剤師転職サイトを選ぶ必要はありません。ただ、職場を見直す可能性があるなら、どんな相談先が自分に合うかだけ先に確認しておくと、いざ動く時に迷いません。
求人を見る時は、年収や休日だけでなく、整頓・薬局内のルール・在庫管理・人員体制・本社の支援体制も確認したいポイントです。薬剤師転職サイト診断では、自分の希望条件に合う相談先を確認できます。
どの薬剤師転職サイトが合うか
迷っていませんか?
「転職サイトが多すぎて、どこを選べばいいかわからない」という方へ。 希望する働き方や転職時期、重視したい条件から、あなたに合う転職サイトの候補を確認できます。
- 自分に合う転職サイトのタイプがわかる
- 働き方や希望条件に合う候補を整理できる
- まず確認する2社がわかる
登録不要・無料|診断後に候補を比較できます
Q&A|薬局の整頓に関するよくある質問
薬局の整頓FAQは、時間・表示・発注札・職場改善の迷いを具体的に整理する。
薬局の整頓でつまずきやすい点を、現場向けにまとめました。本文の補足として、実際に運用する時の迷いを解消していきます。
Q1. 忙しくて整頓の時間が取れない薬局では、どこから始めるべきですか?
最初は、患者さんから見える場所か、毎日何度も使う場所から始めましょう。
受付周辺、調剤台、散剤台、薬袋・分包紙置き場は、変化が伝わりやすい場所です。まず1棚だけ決めると、スタッフにも「探し物が減った」と伝わります。
Q2. 整頓してもすぐ崩れる時は何を見直せばよいですか?
戻す場所が遠すぎないか、表示が小さすぎないか、置く量が多すぎないかを確認してください。
崩れる場所には理由があります。スタッフの意識を責める前に、戻す動作が現場の流れに合っているかを見直しましょう。
Q3. 発注札を作っても運用されない時はどうすればよいですか?
発注札の置き場所、戻す場所、担当者の確認タイミングを決め直します。
札を作っても、札そのものの住所が決まっていなければ運用は止まります。「最後の1箱を開けたら、発注札をどこへ移すか」まで表示しましょう。
Q4. 応援薬剤師が迷わない表示にするには何を書けばよいですか?
棚のカテゴリ名、置く物の名前、発注点、戻し方を書きます。
薬局内だけで通じる略語は避けるか、略語一覧を見える場所に置きましょう。応援薬剤師に毎回説明している内容こそ、表示にする価値があります。
Q5. 仮置き場をなくせない薬局ではどう運用すればよいですか?
仮置き場をゼロにするのが難しい場合は、一時置きの場所を1か所に限定します。
置いてよい時間、終業時に空にする担当者、置ける物の種類を決めてください。何でも置ける仮置き場は、すぐ物置になります。
Q6. スタッフが整頓ルールを守らない時はどう伝えればよいですか?
最初から注意するより、ルールが複雑すぎないかを確認しましょう。
守られないルールは、現場の動きに合っていない場合があります。まず1棚だけ全員で決め、置き場所・表示・発注点を一緒に確認すると、押しつけになりません。
Q7. 整頓を頑張っても職場が変わらない時はどう考えればよいですか?
個人の努力だけで変えられる範囲には限界があります。
人員不足、管理者の無関心、本社の支援不足がある場合、整頓ルールを作っても守る人だけに負担が偏ります。まずは小さく改善し、それでも限界を感じるなら、今の職場を続けるべきか一度整理してみましょう。
まとめ|薬局の整頓は、探す時間を減らすための土台
薬局の整頓は、探す時間と戻す迷いを減らし、現場の落ち着きを作る土台。


薬局の整頓は、見た目をきれいにする作業ではありません。
必要な物を、必要な時に、誰でもすぐ取り出せるようにするための土台です。
- 整頓は、整理で不要物を減らしてから始める
- 置き場所・置き方・表示をセットで決める
- 定位置・定品・定量の3定管理で考える
- 患者さんから見える場所と作業回数が多い場所から始める
- 表示ラベルは位置・表記・色の意味をそろえる
- 発注点と発注札で過剰在庫・欠品を防ぐ
- 仮置きは作らず、必要な場合も一時ルールを決める
- 月1回の確認で崩れた場所を直す
整頓が進んだ薬局では、探す時間が減ります。戻す場所で迷う時間も減ります。新人や応援勤務の薬剤師も動きやすくなります。発注漏れや在庫差異も減り、患者さんを待たせる原因も減ります。
まずは、薬局全体を一気に変えようとしなくて大丈夫です。
受付周辺、調剤台、散剤台、薬袋置き場など、変化が見えやすい場所から1つずつ始めましょう。
整頓は、薬局の空気を変えます。
探し物でウロウロする時間が減り、患者さんと向き合う余裕が生まれます。終業時に調剤台や机の上が空になっているだけでも、翌日のスタートはかなり楽になります。
できる場所から、できる範囲で始める。それでも限界を感じるなら、今の職場で頑張り続けるべきかを一度見直してみる。
そのくらいの距離感で大丈夫です。



整頓が続いている薬局は、忙しい日でも動きが乱れません。まずは「この場所だけは誰でも30秒以内に取れる」を目標に始めてみてください。
薬局の5S活動のやり方
薬局の5S活動は、整理・整頓・清掃・清潔・躾の順で進めると流れが作れます。整頓の次は、清掃と清潔の基準作りへ進みましょう。
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