【新人薬剤師の育て方】管理薬剤師が教える失敗しない指導法11選
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新人薬剤師の指導が不安な薬剤師

新人の薬剤師が薬局に配属になっています。

どういった点に注意して指導をしていけばよいでしょうか。

一応会社のマニュアルはあるのですが、あまり役に立たなくて……。

  • 新人の薬剤師が配属されるけどどうやって教育していけばよいのかわからない……。
  • 新人の教育係を任されたものの不安……。
  • 新人には何から教えていけばよいのだろう……。
  • 自分は4年制を出ているので6年制の薬剤師がどの程度の知識を持っているのかわからない……。

新人薬剤師が店舗に配属されてから一番困るのが、『いったい、どうやって育てればよいのか』ということ。

あなたもこのようなことで悩んでいませんか?

店舗に配属されて即戦力として仕事ができる新人薬剤師はいません。

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即戦力の新人薬剤師は今までに1人もいません。それは当然です。

本社で1カ月くらいの新入社員研修は受けてくるものの、実際の現場での仕事には役立っていないものが多いと感じていませんか?

会社で作ったマニュアルは抽象的過ぎて使い物にならないので、店舗のスタッフが何を教えるのかを考え、新人薬剤師に一から教えなければならない。

通常業務をやりながらですから、相当な負担です。

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私は15年以上の管理薬剤師経験があり、新人薬剤師の教育を過去10数名に行ってきました。

今回は失敗しない新人薬剤師の育て方、指導法について解説していきます。

本記事の内容
この記事では次のことがわかります。

自己紹介

pharma_di(ファマディー)

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全国に300店舗以上運営している大手調剤薬局チェーンの大型店舗で管理薬剤師をしています。

管理薬剤師歴は15年以上。現在は転職サイトの担当者と連絡をとりつつ、中途薬剤師の採用活動にも携わっています。
【私が薬剤師採用のために連絡を取っている≫おすすめの薬剤師転職サイト

面接をした中途薬剤師は軽く100人を超えました。

私は過去2回転職をしていて、1回目は大失敗。ブラック薬局で過ごした数年間は地獄そのもの。

ブラック薬局に入らない方法、そこから脱却した方法を他の薬剤師にも役立ててほしいと思い、当サイト「薬剤師のための転職ブログ・ファマブロ」を始めました。

このサイト内の記事は『過去2回の転職経験』と、『現在の薬剤師採用業務の経験と知見』を基に全て私が1人で書いています。

≫詳しい自己紹介

結論
新人薬剤師の指導方法は誰もが悩むところ。自分が指導されたときの方法が通用しないことがあります。それは世代が全く違うから。メモを取る習慣すらないこともよくあることです。

そういった点も理解しつつ教育していくことが大切です。

新人薬剤師の育て方・指導方法11選

新人薬剤師の育て方・指導方法11選

新人薬剤師の教育は指導する側にとって大きな負担です。

「指導係」を決めて指導にあたらせることもあると思いますが、指導係だけでなく薬局のスタッフ全員で教えて育てていく雰囲気づくりをしていきましょう。

スタッフ全員で分担して教えていけば指導係に負担が集中してしまうことが避けられます。

具体的にどういった点に気を付けて新人薬剤師を指導をしていけばよいのかをまとめました。

早いうちに新人薬剤師に理解してもらうこと

  • 自分で学ぶ、調べるを徹底させる
  • マナー・接遇、言葉遣い(敬語・謙譲語)
  • 報告・連絡・相談を徹底させる
  • おおまかなスケジュールや締切を設ける
  • 初投薬日を事前に設定する
  • 人事評価の基準を予め教えておく(目標設定)
  • よく出る薬から覚えさせる
  • わかったかどうかの確認のために、まとめを言ってもらう
  • 新人だろうが、患者さんの前に立ったら薬剤師
  • 新人薬剤師に事務作業をしてもらう
  • 新人薬剤師にはとにかく声を出させる

自分で学ぶ、調べるを徹底させる

大学の授業ではカリキュラム通りに先生が教えてくれますが、社会人は違います。

給料をもらっている身です。わからない事をなんでも教えてくれるわけではないということを植え付けておきましょう。

わからないことがあったら答えを教えるのではなく、答えの導き方を教えましょう。新人薬剤師自らが学ぶサポートをしてあげてください。

「教えてもらっていないのでわかりません」という言葉が新人薬剤師から出ないように、自分で学ぶ意識を初期の段階からしつこく伝えてください。

参考になりそうな書籍やアプリは以下にまとめました。


マナー・接遇、言葉遣い(敬語・謙譲語)

薬剤師は薬のことだけ知っていればどうにかなるものではありません。

薬局は医療提供施設であり、サービス業でもあります。患者さんやその他の関係する方へのマナー、接遇、言葉遣いを叩き込みましょう。

敬語と謙譲語の使い分けができない新人は少なくありません。1冊本を購入して、新人薬剤師に自分で学習してもらいましょう。




報告・連絡・相談を徹底させる

報告・連絡・相談は新人だけでなく、今後も必要なスキルです。

新人のうちからできるようにしておきましょう。

なぜ報告が必要なのか、なぜ連絡が必要なのか、なぜ相談が必要なのか。理由と共に伝えましょう。

報告・連絡・相談が遅れれば遅れるほど問題が大きくなり、取り返しのつかない事態になってしまうこともあると理解してもらいましょう。

おおまかなスケジュールや締切を設ける

新人薬剤師が店舗に配属されて不安に思っています。これから何をするのか、どのくらいするのか。いつまでするのか。わからない事だらけです。

投薬までにやるべき内容とスケジュールを示してあげましょう。

内容とスケジュールがわかれば、新人薬剤師はいつまでに何をするのか、そのためには家で何をしてくれば良いのかがわかります。家で予習をしてくるかどうかは別として、事前におおまかなスケジュールを伝えましょう。

進捗状況によってはスケジュール通りに行かないこともあるかもしれませんが、その時に修正していけば大丈夫です。

初投薬日を事前に設定する

新人薬剤師の理解度、教育の進捗状況によっても大きく異なりますが、初めて投薬する日(投薬デビュー日)をある程度設定しておきましょう。

デビューの日を設定しておけば、そこから逆算して必要なことを学ぶスケジュールが立てやすくなります。

新人薬剤師はいつから投薬すべきか、それまでにやった置くべきことについてはこちらで詳しく解説しています。

≫新人薬剤師の投薬はいつから?投薬前にやっておくべきこと

人事評価の基準を予め教えておく(目標設定)

新人薬剤師にはなるべく早い段階で人事評価の基準を教えておきましょう。

≫薬剤師の人事評価制度

1年後にはどこまで到達しておく必要があるのか。何を理解しておかなければならないのかをなるべく具体的に伝えます。

配属して半年後くらいには新人薬剤師は投薬デビューしていると思いますが、その時点ではできていなくても2年目になる前までには理解しておくべき内容もあるでしょう。

新人薬剤師が理解すべき内容のチェックリストがあればそれを積極的に活用しましょう。

新人薬剤師には人事評価の基準を伝えるとともに、今期末までにはどうなっていたいかの目標を立てさせましょう。

≫薬剤師の目標設定例

よく出る薬から覚えさせる

薬価収載されている薬を全て覚えるのは無理なことです。薬局でよく出る薬から優先的に覚えさせましょう。

年に1回しか出ない薬を覚えるよりは、毎日出る薬を覚えていた方が役に立つのは言うまでもありません。添付文書の情報だけでなく、患者さんから良くある質問や特殊な使用方法をある薬について教えておくと効果的です。

わかったかどうかの確認のために、まとめを言ってもらう

新人薬剤師には、日々の業務の中で教育したこと、教えたこと自ら学んだことを毎日まとめてもらいましょう。

そして5分から10分程度の時間を取ってまとめを言ってもらいます。書かせるのではなく、しゃべってもらう。これが大事です。

新人薬剤師の頭の中を整理する目的と、理解できたかどうかを指導者が確認する目的の両方が達成できるので便利。ここで十分理解できていないということがわかれば翌日改めて教えることもできるでしょう。

重要なのは、教えっぱなしにせず。理解できているのかどうかを随時確認していくことです。

新人だろうが、患者さんの前に立ったら薬剤師

患者さんの前に立ったら新人であろうが関係ありません。1人の薬剤師です。早い段階でその覚悟を持ってもらいましょう。

新人だからわかりませんは通用しません。

投薬時にわからない質問が来たらどうすれば良いかは投薬デビュー前に教えておきましょう。

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「詳しく調べてきますのでお待ちください」と患者さんに伝えて、調剤室に戻ってくるようにしておけばOKです。決して適当な回答をしないように注意しておきましょう。

新人薬剤師に事務作業をしてもらう

新人薬剤師には受付やレセコン入力などの事務作業をしてもらうことがオススメです。

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実は、私も新人の時にこの方法で指導されました。薬よりも先にレセコンの入力を覚えたくらいです。

受付に立つと電話はかかってくるし、患者さんが処方せんを持ってくるし、調剤室からは呼ばれるし。

まあ大変です。そのような状況の中でレセコンに処方内容を入力しなくてはなりません。

新人薬剤師には、事務さんの大変さを初期の段階でわかってもらいましょう。

絶対に損はしません。接遇は学べますし、保険の理解もできます。全体の流れもわかります。

事務さんの大変さがわかれば今後、事務さんに対して横柄な態度をとることは無いでしょう。

事務さんに対して横柄な態度をとる薬剤師がいなければ薬局の雰囲気が良くなること間違いなしです。

新人薬剤師にはとにかく声を出させる

新人薬剤師には調剤や鑑査の際に、声を出させましょう。

『声を出す』ことには様々な利点があります。指さし、声出しで確認するだけで調剤ミスが格段に減ります。

自分の声を聴くことで間違いに気づけるのです。さらに、声を出していれば、周りの薬剤師に間違いを指摘してもらえるという利点もあります。

さらに、さらに、新人薬剤師が今どんな仕事をしているのかを逐一見ていなくてもわかるという利点もあります。

あなたが新人薬剤師の指導をする際には、ぜひ新人薬剤師に声を出させるようにしましょう。

指導する側(OJT担当者)の注意点

指導する側(OJT担当者)の注意点

新人薬剤師に指導する際の注意点を知っておきましょう。教えている側にはそんなつもりは無くても、精神的に追い詰められて薬局に出勤してこなくなってしまう新人薬剤師が最近では増加しています。

指導する側の薬剤師(OJT担当者・指導係)の注意点

  • 全体像を教えてから各論へ
  • 世代間ギャップはあるものとして付き合う
  • 過去の新人薬剤師と比べてはいけない
  • 絶対に怒ってはいけない
  • 指導者側のマニュアルを作り上げていく(追記していく)

全体像を教えてから各論へ

新人薬剤師は学生時代に薬局実習を受けていますので、ある程度の流れはわかっているかもしれません。しかし、他社で薬局実習を受けているとやり方が全く違う事もよくあることです。

新人薬剤師に指導する場合には、まず初めに全体像をつかんでもらい、そこから各論を教えるようにしましょう。

いきなり各論から教えると、この内容をいつ使うのかを理解してもらえないことがあるからです。

世代間ギャップはあるものとして付き合う

指導薬剤師と新人薬剤師の年齢差が大きいと、どうしても世代間のギャップが気になることがあります。

 薬局で感じる新人薬剤師とのジェネレーションギャップ

  • 固定電話に出ることができない(固定電話が家に無い)
  • メモを取る習慣がない(スマホで写真を撮る)
  • フラットすぎる関係(上下関係がわかっていない)
  • プライベートを優先しがち
  • 自ら意見を述べない(消極的)
  • 失敗を極度に恐れる(挑戦しない)

こういった世代間ギャップ(ジェネレーションキャップ)はあるものとして受け流しましょう。

気づいた時に少しずつ教えていくしかありません。

過去の新人薬剤師と比べてはいけない

仕事の覚えが早い新人薬剤師もいれば、なかなか仕事を覚えてくれない新人薬剤師もいます。過去の新人薬剤師と比較することはやめましょう。

一度仕事ができないというレッテルを貼ってしまうと、新人薬剤師は自信をすぐになくしてしまいます。

新人薬剤師自身の過去と比較してあげましょう。あの時できなかったことが、今はできるようになった。成長しているということを新人薬剤師本人に実感させてください。

新人薬剤師の自己肯定感を高めてあげるような指導が必要です。

絶対に怒ってはいけない

新人薬剤師の指導で絶対に怒ってはいけません。

『怒る』とはただ感情をぶつけること。

それに対して『叱る』は相手が成長するためのアドバイス。

怒るではなくて叱るを意識してください。

  • 「まだそれやってんの!」
  • 「遅すぎる!」
  • 「早くやれよ!」
  • 「ぼーっとするな!」

これ全部アウトです。

指導する側は言葉遣いや感情のコントロールに対して特に気を付けましょう。上から目線はNGです。

昔はこうだったという武勇伝も不要です。一緒に頑張ろうと励ましながら指導していきましょう。

指導者側のマニュアルを作り上げていく(追記していく)

新人薬剤師を教えた時に使った資料は全て保管しておきましょう。来年もまた新人の指導をするかもしれません。

指導者用のマニュアルを使って新人指導をすれば、時間の節約ができます。

指導でうまく行った点やうまくいかなかった点を踏まえて指導者用のマニュアルを加筆修正しておきましょう。

薬局にとって有用な資産となり、次に新人が配属されたときにも役立つはずです。

【新人薬剤師の育て方】管理薬剤師が教える失敗しない指導法11選まとめ

【新人薬剤師の育て方】管理薬剤師が教える失敗しない指導法11選まとめ

早い段階で新人薬剤師に理解してもらうことと、指導する側の注意点について解説してきました。

 早いうちに新人薬剤師に理解してもらうこと

  • 自分で学ぶ、調べるを徹底させる
  • マナー・接遇、言葉遣い(敬語・謙譲語)
  • 報告・連絡・相談を徹底させる
  • おおまかなスケジュールや締切を設ける
  • 初投薬日を事前に設定する
  • 人事評価の基準を予め教えておく(目標設定)
  • よく出る薬から覚えさせる
  • わかったかどうかの確認のために、まとめを言ってもらう
  • 新人だろうが、患者さんの前に立ったら薬剤師
  • 新人薬剤師に事務作業をしてもらう
  • 新人薬剤師にはとにかく声を出させる

指導する側の薬剤師(OJT担当者・指導係)の注意点

  • 全体像を教えてから各論へ
  • 世代間ギャップはあるものとして付き合う
  • 過去の新人薬剤師と比べてはいけない
  • 絶対に怒ってはいけない
  • 指導者側のマニュアルを作り上げていく(追記していく)

これが最適な指導方法であるとは限りません。新人薬剤師は一人一人性格も個性も異なるからです。

指導方法に答えはありません。

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新人薬剤師を教えながらこちらも一緒に学んでいく。そんな姿勢で新人薬剤師に接していけば教育は必ず成功します。

≫勉強も大事ですが、新人薬剤師のうちにマナーを身に付けさせておくことは大切です。