薬剤師の人事評価(人事考課)にも目標設定が導入されています。

期初に目標を設定し、設定した目標をどれくらい達成したか(到達したか)を期末に評価されます。その評価をもとに昇給や賞与が決まるというのが一般的です。
とはいえ、薬剤師の仕事は営業の方のような契約件数といった明確な数字が出にくいですね。そのせいで目標設定を難しく感じている薬剤師も多いのではないでしょうか。
ここでは目標設定に困った薬剤師向けにどういう視点で目標を立てたらよいのかという考え方と目標設定例を挙げてみたいと思います。
私は管理薬剤師として働いていますので、薬局の一般薬剤師と事務スタッフを評価する「評価者」であり、また上司に評価される「被評価者」でもあります。

薬剤師の目標設定で意識すること

まずは目標設定と人事評価の決まり事を熟読する

この目標設定がどのような意味があるのかをしっかり理解しましょう。
自分自身の成長のための目標なのか、翌期の昇給や賞与に影響するのか、影響するとすればどの程度影響するのか。将来の昇進(管理薬剤師やその上の役職)に影響してくるのか。何のための目標設定なのかをしっかりと確認しておきましょう。
影響が大きいのであれば、それだけ真剣に目標設定に取り組まなければいけません。

あなたがいる薬局(部署・組織)は何が求められているのかを知る

薬局ではいま何か求められているでしょうか。
患者数を増やすこと?
主要医療機関以外の処方箋を獲得して集中率を下げること?
地域支援体制加算の算定をするために在宅を獲得すること?
まずは今現在、本部(本社)からどういう指示が出ていて、何に注力するよう言われているのかを知りましょう。

それを達成できるような(近づけるような)目標を設定することは薬局のためにもなりますし、達成することができればあなた自身の評価も確実に高まるでしょう。

あなたを評価する上司はあなたに何を求めているのかを知る

あなたを評価する上司(評価者)はあなた(被評価者)に何を求めているのかをよく知っておきましょう。
評価者があなたに求めていることをあなたが実践していきさえすればあなたの評価は自然と高まっていくでしょう。
たとえば、評価者、被評価者が次のように考えていたとします。

上司(評価者)「薬歴を早く書き上げて残業を減らしてほしい」
薬剤師(被評価者)「ちょっと時間をかけてでも薬歴を丁寧にしっかりと書いて高評価をもらおう」

この薬剤師が高評価を得ることは極めて難しいでしょう。

(※もちろん薬歴をしっかり書くことは大切です。上司との考え方の違いを分かりやすくするためにこの例をあげました。)

自動的に達成できるような目標はダメ

高評価をもらいたいからと難易度が低い目標を設定する薬剤師も多いですが、かえって逆効果です。

もし目標を達成したとしても、「それはあなたの力ではない」と言われて終わりです。さらに、難易度下げて目標作ったなとバレバレです。

ちょっと頑張れば目標が達成できるような、絶妙な難易度設定が必要です。

評価者が評価しやすい目標であるかどうか

あなたの薬局には何人の被評価者がいますか?上司(評価者)はその全員を評価しなくてはなりません。
評価しやすい目標=結果が数字として出てくるもの。

前年との比較ができるとなお良いです。前年と比較することで難易度の設定がしやすくなりますね。

なんで上司の評価しやすさまで考えなければいけないんだという声が聞こえてきそうですが、これも高評価を得るためです。
目標数が10で結果が12だったら目標達成、結果が3だったら全然ダメというように、評価者にも被評価者にも客観的であることは非常に大切です。

自分がやりたいことにする

自分がやりたくないようなことを目標にしてしまうと、ずっとモヤモヤした状態で1年間仕事をしなくてはいけません。少なくとも自分がやりたい、頑張ってみたい内容を目標に設定しましょう。

SMARTの法則を目標に盛り込む

SMARTの法則とは、5つの基準に基づいた目標設定方法のこと。
一般的に『Specific』、『Measurable』、『Achievable』、『Relevant』、『Time-bound』の頭文字からそう呼ばれています。

Specific(具体的な)

目標が具体的かどうか、ほかの人が読んでもわかりやすいか

Measurable(測定可能な)

達成度を測れる目標かどうか。評価者、被評価者にとって目標達成度合いがわかりやすいか。

Achievable(実現可能な)

達成可能な目標か。希望や願望ではなく現実的かどうか。

Relevant(関連した)

設定した目標が組織の目標に関連しているか。

Time-bound(期限を定めた)

期限が設定されている目標かどうか。

目標を達成するための行動目標も合わせて考える。

目標を立てっぱなしでは高評価は得られません。具体的にあなたは何をするのかという行動目標も合わせて考えましょう。

薬剤師の目標設定の手順

    1. あなたが今の薬局でやりたいことを考える。担当している業務の内容や任されていることなどから考えてみましょう。
    2. その中で上司に求められていることは何かを意識して絞り込む。
    3. 難易度を設定するために昨年の実績や現状などの数値・数字を集める。
    4. SMARTを意識して目標にする。

薬剤師の目標設定例

まずは目標として無事に通過した(上司からOKが出た)ものを見てみましょう。

●●年□月末までに、かかりつけ薬剤師の同意書を○名取得する。

S:「かかりつけ薬剤師の同意書取得」でわからない人は薬局薬剤師にはいないでしょう。
M:「同意書枚数」は測定可能です。
A:難易度の設定は○名を変えることで対応しましょう。上司からノルマが出ているのであればそこを上回る人数の設定が必要です。
R:かかりつけの点数をとりたくない薬局は無いでしょうから問題ありません。
T:期限が入っています。
そのための行動目標は「対応することが多い患者さん、かかりつけ薬剤師が必要そうな患者さんをピックアップし、いつでも声をかけられるよう同意書を準備しておく」ということになるでしょうか。

かかりつけ薬剤師の要件を満たしていない薬剤師はこの目標は当然使えません。

薬局の在庫月数を毎月末時点で□カ月分未満にする

S:数値がしっかり出せるのであればよいと思います
M:月末時点で□カ月分未満なので測定可能です。
A:□カ月を変えることで難易度設定は可能ですね。
R:在庫削減の指示が出ているのであれば組織目標に連動していて良いでしょう。
T:今月末からすぐには結果が出ないでしょうから●月以降としておくと良いかもしれません。
行動目標:発注や在庫担当を任されているのであれば適正在庫を計算し直す、1人にしか出ていない薬や高額な薬の発注タイミングを翌月にする、デッドストックを解消させることをやっていく必要があります。
ここからは修正が必要な目標の例です。

薬局内で症例検討会を毎月1回開催する

S:症例検討会のレベル、掘り下げ方がどの程度のものなのかが具体的ではないと指摘されそうです。
M:「毎月1回」は測定可能です。
A:そもそもこういった時間を設けることができるのかどうかの確認は必要です。
R:症例検討会でほかの薬剤師のレベルアップにもつながりそうです。あなたが新卒薬剤師だと難しそうです。
T:期限はありませんが、頻度は入っていますので良いでしょう。
症例検討会をやったという記録をしっかり残すことが必要です。簡単な検討会をやる程度では高評価は難しいでしょう。

1人前の薬剤師になる

S:1人前の薬剤師とは何かの設定が必要です
M:1人前になったかどうかはどうやって測定すればよいでしょうか?
A:
R:早く1人前になって欲しいです。
T:期限の記載がありません。
1人前の薬剤師が抽象的すぎます。1人前の薬剤師についてしっかり定義されていて評価者と被評価者で共有されていれば良いですが、そうでない場合はこのままでは評価できません。

受付回数を△%増やす

S:何と比べてでしょうか。前年?
M:受付回数は測定可能です。
A:もともと右肩上がりで受付回数が増えているなら達成可能かもしれません。
R:受付回数が増えるのは薬局にとって良いことです。
T:期限の記載がありません。
行動目標は何になるでしょうか。例えば、近隣に医療機関を誘致したり、院外処方にしてもらうなどできるくらいの力があればよいでしょう。神頼みではだめです。
一般薬剤師が受付回数を目標にするのは避けたほうが良いと思います。もし達成してもあなたの努力がどの程度かを評価することは極めて困難です。別の要因で増えたのか、あなたの頑張りで増えたのか調べることができません。

医薬品の廃棄額を減らす

S:減らすが具体的ではありませんので前年の金額を調べて具体的な額を設定すると良いでしょう。
M:廃棄額は在庫管理システムで集計可能ですね。
A:廃棄額をいくら未満とするかで難易度調節が可能です。
R:医薬品の廃棄は利益減少につながりますから組織目標に関連していると言えます。
T:期限が入っていません。
減らすを具体的にする必要があります。前年はどの程度の廃棄があったのでしょうか。
「●月から●月末までの医薬品廃棄額を前年比で△%以上減らす」とすると良いかもしれません。

期限切れ等で高額な薬の廃棄予定がある場合、それだけで目標が達成できないという事態にもなりかねませんから注意しましょう。

後発品の使用率を85%以上にする

S:後発医薬品調剤体制加算3を算定するということでしょうか。使っている人を85%ではないですよね。まさか単月で85%を1回でも超えれば良いということでしょうか?
M:レセコンから調べることが可能です。
A:現状が83%くらいなら達成可能かもしれません。
R:加算を増やしたいので達成できたら薬局にとって良いことです。
T:期限の記載がありません
「○年●月までに後発医薬品使用体制加算3の算定を開始する」とすれば良いでしょう。注意として、一般薬剤師がこの目標を設定した場合、受付回数のように、あなたの頑張りによる増加分がどの程度かを測ることができません。/div>

増やす、減らす、頑張る、努力する、力を入れるという言葉は目標設定には使用しないようにしましょう。抽象的で判断できません。具体的にどのくらい増やす(減らす)のかを追記しましょう。
一般用医薬品の売上を増やす

一般用医薬品の売上を前年と比べて20%以上増やす
残業減らす

自分の残業時間を前年と比べて10%以上減らす

このように具体的に書いておくことが必要です。

その他の目標例

薬剤師の目標に使えそうな項目を挙げてみました。このままでは目標にはなりませんので、SMARTの法則を使って使える目標にしてみてください。

  • △△加算を○回以上算定する
  • 待ち時間クレームをゼロにする
  • 業務改善をする
  • 服薬指導用ツールを作成する
  • 整理整頓する
  • アプリの使用者数を○人にする
  • 在宅を獲得する

薬剤師の目標設定方法のまとめ

薬局として、薬剤師として求められている事のうち、あなた自身が頑張ってやってみたいことを具体的に(SMARTの法則を使って)記載し、それに対する行動目標を立てていきさえすれば、その目標は上司に承認されるはずです。

その行動目標の通りに進めていけば期末の評価は良いものになることでしょう。

この記事が薬剤師の目標設定に少しでも役に立てればうれしいです。
目標設定をしてもどうせ給料上がらない。目標を達成したとしても昇給額がどの程度かわからない。結局昇給や賞与に関係ない。人事評価制度や査定に不満がある薬剤師は得する薬剤師の転職サイトをどうぞ。