
昇給月の給与明細を開いたのに、先月と金額がほとんど変わっていない。
基本給は少し上がっているものの、別の手当が減り、総支給額は同じ。新人の指導や欠員対応まで任されているのに、役職も手当もつかない。
そんな状態が続けば、「これ以上頑張っても給料は上がらないのでは」と感じますよね。
上司へ聞きたくても、お金の話をすると印象が悪くなりそうで言い出せない。「来年は考える」と言われたまま、何年も待っている薬剤師もいるでしょう。
薬剤師の給料が上がらないのは、本人の努力が足りないからとは限りません。
一般薬剤師の給与上限に達している。昇格できる役職が空いていない。基本給の昇給分だけ調整給が減っている。このように、会社の給与制度が原因となっている場合もあります。
私は、薬剤師として25年以上、管理薬剤師として20年以上勤務してきた薬剤師ファマディーです。
これまで500名以上の薬剤師面接に関わってきました。


管理薬剤師として人事評価に関わるなかで感じるのは、本人が頑張っていても、実績が評価項目と一致していなければ給与へ反映されないということです。
一方、実績を伝えても昇給条件が示されない職場では、本人の努力だけで状況を変えることはできません。
- 給与明細を2~3年分並べ、基本給と手当を見比べる
- 上司へ昇給条件・昇給額・次回の確認日を尋ねる
- 3か月後と半年後に、会社の説明と実際の評価を見比べる
この記事では、給与明細や社内規程の見方、上司への質問例、そのまま使える昇給確認シートを紹介します。
給与明細、社内規程、上司の回答をもとに、次回の評価を待つか、転職準備を始めるか考えていきましょう。
早く給料を上げたい!と思ったらまずは薬剤師の年収・給料|平均・職場別相場と年収アップ方法をご覧ください。
薬剤師の給料が上がらないときは、仕事を増やす前に給与制度を調べる
薬剤師は仕事を増やす前に、給与明細と社内規程で昇給条件・給与上限・手当の変化を確認する必要がある。
給料が増えないと、「もっと在宅を担当しよう」「資格を取ろう」と考えるかもしれません。
しかし、一般薬剤師の給与上限に達している職場では、担当業務を増やしても基本給は変わりません。基本給の昇給と同じ額だけ調整給が減る会社なら、毎月の総支給額も増えないでしょう。
仕事を増やす前に、次の3点を調べます。
- 基本給と各種手当が過去2~3年でどう変わったか
- 昇給や昇格の条件が会社の規程に書かれているか
- 条件を満たした後、いつ、いくら給与が上がるのか
この3点がわからないまま仕事を増やしても、何を達成すれば給料が上がるのか判断できません。
給料が伸びない原因や、昇格・働き方の変更を含めた年収アップの方法は、薬剤師が年収を上げる方法で詳しく解説しています。


給与明細・源泉徴収票・社内規程で見る項目
薬剤師は給与明細・源泉徴収票・社内規程を照合し、基本給と手当の実際の変化を確かめる。
給与明細を毎月見ていても、手取り額だけを確認している方は多いものです。
昇給の有無を調べるときは、基本給と各種手当を分けて見ます。税金や社会保険料の負担が増えると、基本給が上がっても手取り額が減る場合があるためです。
直近2~3年分の給与明細を並べる
同じ月の給与明細を2~3年分並べます。
4月に昇給する会社なら、前年4月と今年4月を比べてください。賞与月の明細と源泉徴収票も用意すれば、月給だけでなく年間収入の変化もわかります。
| 確認する項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 基本給 | 前年よりいくら上がったか |
| 薬剤師手当 | 金額が減っていないか |
| 役職手当 | 担当している責任に見合う額か |
| 調整給 | 基本給の昇給と同時に減っていないか |
| 固定残業代 | 何時間分が含まれているか |
| 賞与 | 何を基準に計算されているか |
| 源泉徴収票 | 年間の支払金額が増えているか |
たとえば、基本給が月5,000円上がり、調整給が月5,000円下がっていれば、毎月の総支給額は変わりません。
会社から「昇給した」と説明されても、実際に受け取る金額は増えていないことになります。
調整給が減る条件や、賞与・退職金への影響は、調整給で昇給分が消える仕組みで詳しく解説しています。


就業規則・賃金規程・人事評価規程を見る
給与明細で金額の変化を確かめたら、次は会社の規程を見ます。
賃金規程とは、基本給や手当、昇給など、給与の決め方を書いた社内規程です。職場によっては、人事評価の方法を別の規程にまとめています。
常時10人以上の労働者がいる事業場には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています。就業規則には、賃金の決め方や昇給に関する事項を記載し、労働者が確認できる状態にしておかなければなりません。
社内の共有フォルダや事務所の書棚に置かれていることもあります。保管場所がわからなければ、人事担当者へ尋ねましょう。
見る項目は次のとおりです。
- 昇給を判断する時期
- 一般薬剤師の等級と給与範囲
- 次の等級へ上がる条件
- 主任・管理薬剤師・薬局長になる条件
- 役職ごとの手当
- 調整給が減額または終了する条件
- 賞与の計算に使う給与項目
規程に年1回の評価と書かれているのに面談が行われない、等級の条件を満たしても昇格の話が出ない場合は、その理由を上司や人事担当者へ尋ねます。
就業規則の記載事項や閲覧方法は、厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも確認できます。
今の年収が地域や働き方に見合っているか比べる
昇給額が小さくても、すでに同じ地域や働き方の薬剤師より高い年収を受け取っている場合があります。
反対に、後輩指導や責任者業務を担当しているにもかかわらず、同じ地域の一般薬剤師より年収が低いなら、待遇について相談する根拠になります。
年収・時給チェックツールでは、現在の給与や働き方を入力し、年収・時給の目安を確認できます。
結果は目安として使い、基本給、手当、勤務時間のどこに差があるのかを給与明細と見比べてください。
年収が目安より低いとわかったら、上司へ昇給条件を尋ね、今の職場で給与が変わる時期と金額を確かめます。
上司へ給料の相談をするときに聞く5つの質問
薬剤師は上司へ昇給条件・不足項目・判断時期・昇給額・次回確認日を具体的に質問する。
給料の相談は、切り出し方に迷いますよね。
「給料が低いので上げてください」と伝えると、現在の不満だけが話の中心になります。聞きたいのは、次の等級へ上がる条件と、条件を満たした後の基本給や手当です。
次のように切り出せば、単なる給与の要求ではなく、昇格条件についての相談だと伝わります。
今後の働き方について相談したいことがあります。次の等級や役職を目指す場合、必要な条件と現在足りていない点を教えていただけますか。
面談で聞く内容
- 次の等級へ上がるために必要な条件は何ですか
- 現在の評価で足りていない項目は何ですか
- 条件を満たしたかどうかは、いつ判断されますか
- 等級が上がった場合、基本給や手当はいくら変わりますか
- 次回はいつこの話を確認すればよいですか
特に重要なのは、5つ目の質問です。
「今は難しい」「もう少し頑張って」と言われたまま面談を終えると、次に話す日が決まりません。3か月後、次回の評価面談、次の昇給月など、再確認する日をその場で決めましょう。
「もう少し頑張って」と言われたときの聞き返し方
上司から具体的な説明がなければ、次のように聞き返します。
何を、どの水準まで行えば評価の対象になりますか。次回の面談までに達成の有無がわかる目標を教えてください。
「在宅を頑張る」では、何件担当すれば評価されるのかわかりません。
「新規の在宅を月2件担当する」「新人向けの手順書を作る」「廃棄予定額を前年より10万円減らす」など、数字や完成物で結果を示せる目標に変えます。
評価項目の見方や、面談で実績を伝える方法は、薬剤師の評価を上げる方法で詳しく解説しています。


責任者の仕事をしているのに手当がない場合
管理薬剤師が休んだ日の責任者対応、新人指導、シフト調整、在庫管理を継続して任されているなら、役割と待遇を確認します。
聞く内容は、正式な就任日、役職手当、担当業務の3点です。
「将来は管理薬剤師にする予定」と言われても、就任日と条件が決まっていなければ、責任だけを負う期間が続きます。
管理薬剤師の手当や責任範囲を詳しく知りたい方は、管理薬剤師・薬局長の年収と求人選びを参考にしてください。


そのまま使える薬剤師の昇給確認シート
薬剤師は昇給条件と面談内容を確認シートへ記録し、会社の説明を後から検証できる状態にする。
上司へ相談しても、内容を書き残していなければ、数か月後に条件や約束した日を忘れてしまいます。
次の表をスマートフォンのメモや表計算ソフトへ写し、面談前後に記入してください。会社から説明がなかった項目は、空欄にせず「回答なし」と残します。
| 記入する項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 前年の基本給 | 月額 円 |
| 現在の基本給 | 月額 円 |
| 前年の調整給 | 月額 円 |
| 現在の調整給 | 月額 円 |
| 前年の年収 | 円 |
| 現在の等級・役職 | |
| 次の等級へ上がる条件 | |
| 会社から示された目標 | |
| 条件を満たした後の基本給 | 月額 円 |
| 追加される役職手当 | 月額 円 |
| 次回の評価日 | 年 月 日 |
| 次回の確認日 | 年 月 日 |
昇給条件を口頭で説明された場合は、面談日と回答内容を書いておきます。可能であれば、面談後にメールで認識が合っているか尋ねてください。
このシートが埋まらないからといって、あなたの準備不足とは限りません。上司や人事担当者が昇給条件や給与額を説明できないこと自体が、今後を決めるための情報になります。
3か月後と半年後に、会社の説明と実際の評価を見比べる
薬剤師は3か月後と半年後に、示された条件・自分の実績・会社の評価対応を見比べる。
上司と話した後は、説明された条件と自分の取り組みを記録します。
判断を急ぐ必要はありません。ただし、次に確認する日を決めずに待つと、「来年こそ上がるかもしれない」と時間だけが過ぎてしまいます。
3か月後と半年後を区切りにして、自分の行動と会社の回答を見直しましょう。
3か月後は、示された条件と自分の行動を比べる
3か月後に見るのは、昇給額ではありません。
上司から示された条件と、自分が取り組んでいる仕事が一致しているかを見ます。
会社が後輩育成を評価すると説明したのに、実際の面談では在宅件数だけを求められたなら、評価条件が変わっています。
条件が変わったときは、変更した理由、新しい目標、次回の確認日を記録へ残してください。
半年後は、自分の努力より会社の対応を見る
半年後に見るのは、次の3点です。
- 示された条件を自分が満たしたか
- 上司が実績を人事評価へ反映したか
- 昇給日と、上がる基本給・手当の金額が示されたか
条件を満たし、実績も報告したのに「もう少し待って」と再び言われた場合は、次の昇給日と金額を書面で示してもらえるか尋ねます。
評価条件が毎回変わる。約束した時期が先送りになる。昇格条件を誰も説明できない。このような職場では、伝え方を工夫するだけで給与制度を変えるのは困難です。
今の職場で次回の評価を待つか、転職準備を始めるか
薬剤師は昇給条件と反映時期が明確なら待ち、不明確なら転職準備を進める。
給料に不満があっても、すぐに職場を変えられるとは限りません。
人間関係がよい、休みを取りやすい、通勤時間が短いなど、今の職場に残りたい理由もあるでしょう。
転職するかどうかは、給与額だけで決める必要はありません。昇給条件、次回の評価日、給与へ反映される金額が示されているかで判断します。
今の職場で次回の評価を待ってもよい状態
- 昇給や昇格の条件を書面で見られる
- 現在足りていない評価項目を説明されている
- 次回の評価日が決まっている
- 条件を満たした薬剤師が実際に昇格している
- 給与以外の勤務条件には納得している
この状態なら、決められた日まで取り組みを続け、次回の評価結果を見る選択があります。
半年以内の転職を視野に入れたい状態
- 2~3年以上、基本給がほとんど変わっていない
- 昇給条件を尋ねても回答がない
- 条件を満たしても人事評価へ反映されない
- 責任者の仕事をしても役職や手当がつかない
- 賞与や手当が毎年減っている
- 退職者が出ても補充されず、担当業務が増え続けている
- 店舗の閉鎖や統合の話が出ている
転職準備を始めることは、明日退職することではありません。
今の職場で次回の評価を待ちながら、希望する年収、休日、勤務時間、通勤範囲を書き出しておく方法もあります。
給料だけの問題なのか、人員不足や人間関係も含めて職場を変えるべき状態なのか、転職必要度診断で確かめてみてください。
診断結果を参考に、上司との話し合いを続けるか、半年以内の転職準備を始めるか考えてみましょう。
今の職場を続けるべきか迷っていませんか?
「辞めたいけれど、本当に転職すべきかわからない」そんな薬剤師向けに、今の働き方を見直す必要度をかんたんに確認できます。
- 今の職場への不満を整理できる
- 転職を考えるべき状態か確認できる
- これから取るべき行動がわかる
登録不要・無料でかんたんに確認できます
給与以外の条件も含めて転職を考えたい方は、薬剤師が転職を迷ったときの判断基準も参考にしてください。


転職を考える場合も、提示年収だけで決めない
薬剤師は転職先の提示年収だけでなく、基本給・昇給実績・給与上限を確認する。
今の職場で給料が上がらないと、高い年収が書かれた求人に目が向きます。
しかし、入社時の年収が高くても、基本給が低く、調整給や固定残業代が多ければ、数年後に同じ悩みを抱えるかもしれません。
転職先では、最低でも次の3点を尋ねます。
- 月給のうち、基本給はいくらか
- 2年目以降の昇給実績はいくらか
- 一般薬剤師の給与上限はいくらか
転職先の基本給、昇給額、給与上限を詳しく比べたい方は、薬剤師が年収だけで転職先を決めると後悔する理由も確認してください。


薬剤師の給料が上がらないときによくある質問
薬剤師は給与明細と会社の説明を記録し、昇給条件と次回確認日を具体化する。
ここでは、給与明細や上司との面談で迷うことが多い質問に絞って回答します。
Q1.基本給が上がったのに総支給額が変わらないのはなぜですか?
調整給、資格手当、住宅手当など、別の項目が減っている可能性があります。
前年同月の給与明細と並べ、基本給以外の金額も見比べましょう。
Q2.昇給額が少ないかどうかは、何と比べればよいですか?
前年の基本給、同じ等級の給与上限、地域や働き方が近い薬剤師の年収と比べます。
業務量や責任が前年より増えているかも一緒に見てください。
Q3.上司へ給料の相談をすると評価が下がりませんか?
昇給条件を質問しただけで、直ちに評価が下がるとは限りません。
不満だけを伝えるのではなく、現在の実績と今後担当したい役割を示し、次の等級へ上がる条件を尋ねましょう。
Q4.「もう少し頑張って」と言われたら、何を聞けばよいですか?
何を、どの水準まで、いつまでに行えば評価されるのかを聞きます。
次回の確認日もその場で決めてください。
Q5.昇給条件を口頭でしか説明されない場合はどうしますか?
面談後に、日付、説明された条件、次回確認日を記録します。
可能であれば、認識が合っているか上司へメールで尋ねてください。
Q6.責任者の仕事をしているのに手当がありません
一時的な代理なのか、継続して担当する役割なのかを尋ねます。
今後も担当するなら、正式な就任日、役職名、手当、担当業務を書面で示してもらいましょう。
Q7.何年給料が変わらなければ転職を考えるべきですか?
年数だけでは決められません。
ただし、2~3年以上ほとんど変わらず、昇給条件や次回の評価日も示されないなら、別の職場の給与や勤務条件と比べる時期です。
Q8.すぐに転職できない場合は、何から始めればよいですか?
給与明細と賃金規程を見て、上司との面談内容を記録してください。
同時に、希望する年収、休日、勤務時間、通勤範囲を書き出しておけば、転職先の条件と比べる基準になります。
まとめ|半年後も同じことで悩まないため、次の確認日を決めよう
薬剤師は給与制度を確認し、3か月後と半年後の見直し日を決めて行動する。
薬剤師の給料が上がらないときに、最初から自分の努力不足だと決めつける必要はありません。
一般薬剤師の給与上限、調整給、役職の空き、評価制度など、本人だけでは変えられない原因もあります。
まずは、次の順番で進めましょう。
- 直近2~3年分の給与明細と源泉徴収票を比べる
- 就業規則・賃金規程・人事評価規程を見る
- 上司へ昇給条件と次回の確認日を聞く
- 昇給確認シートへ面談内容と結果を記録する
- 3か月後と半年後に、会社の説明と実際の評価を見比べる
条件と時期が具体的に示されているなら、今の職場で次回の評価を待つ選択があります。
条件を満たしても話が進まない、責任だけが増える、評価条件が毎回変わる状態なら、会社側の問題まで自分の責任にしないでください。
転職を考えることは、すぐに退職することではありません。経験年数、担当業務、責任に見合う基本給や手当を出す職場がほかにあるか調べる行動です。
半年後も同じことで悩まないために、まずは給与明細を並べ、上司へ確認する日を決めるところから始めましょう。



