
仕事を覚え、任される業務も増えた。
それなのに、給与明細を見ると去年とほとんど変わっていない。
後輩の指導や在庫管理まで任されているのに、昇給は月に数千円だけ。「薬剤師として働き続ければ、いつか給料は上がるの?」と不安になりますよね。
結論からお伝えすると、薬剤師の給料が上がる職場はあります。ただし、長く勤めるだけで大きく上がるとは限りません。
給料が上がるかどうかは、本人の努力だけではなく、勤務先の昇給制度、評価基準、役職、手当、基本給の上限によって決まります。
この記事でいう「給料が上がる」とは、残業時間を増やさなくても、基本給、固定手当、役職手当、賞与のいずれかが増え、年収が上がる状態です。残業代が増えた結果、年収だけが高くなった状態は昇給に含めません。



管理薬剤師や採用担当として、薬剤師の評価や採用に関わってきました。給料が上がらない原因は、本人の能力だけではありません。まずは自分を責めず、今の職場に昇給の仕組みがあるかを見ていきましょう。筆者の経歴は薬剤師ファマディーのプロフィールで紹介しています。


薬剤師の給料が上がるかは勤続年数より制度で決まる
薬剤師の給料は勤続年数ではなく、昇給制度・評価基準・役職手当・基本給の上限で決まる。
薬剤師として経験を積めば、投薬や監査以外の仕事も増えていきます。後輩指導、在庫管理、医療機関への対応、シフト調整などを任される方もいるでしょう。
それでも給料が変わらなければ、「これ以上頑張っても同じなのでは」と感じるのは当然です。ここでは、薬剤師の給料が上がる主な仕組みを整理します。
定期昇給で基本給が上がる
定期昇給は、勤続年数や等級に応じて基本給を引き上げる制度です。
毎年昇給する会社もありますが、「昇給制度あり」と書かれているだけでは実際の金額まではわかりません。昇給額が月1,000円なら、年間の基本給増加額は12,000円です。
見るべきなのは、制度の有無より直近の実績です。過去3年間で基本給がいくら増えたのかを、給与明細で確かめてください。
人事評価が基本給や賞与へ反映される
人事評価と給与が連動している職場では、仕事の成果が基本給、等級、賞与へ反映されます。
ただし、「忙しい店舗で頑張った」という説明だけでは、上司が昇給や昇格を判断する根拠として扱えない場合があります。
管理薬剤師としてスタッフの評価に関わった経験では、「忙しい店舗を支えた」という説明だけでは、評価の根拠を具体的に示せませんでした。一方、廃棄額の削減や新人教育の内容を事実として挙げれば、どの評価項目に該当するのかが明確になります。
- 廃棄額や過剰在庫を減らした
- 薬歴の残件や残業時間を減らした
- 新人向けの手順書を作成した
- 在宅患者への対応件数を増やした
- 店舗内の作業手順を見直し、ミスを減らした
評価面談では「頑張りました」だけで終わらせず、何を変え、どのような結果が出たのかを伝えるのがポイントです。
面談で伝える内容に迷う方は、薬剤師の評価を上げて昇給や賞与につなげる方法も参考にしてください。


管理薬剤師や薬局長への昇進で手当が増える
管理薬剤師や薬局長へ昇進すると、役職手当が付き、月給が増える場合があります。
ただ、手当だけを見て引き受けるのはおすすめできません。管理薬剤師になると、医薬品の管理、スタッフ教育、行政対応、シフト調整、クレーム対応などの責任が加わります。
月3万円の手当が付いても、残業代が減り、休日の連絡が増えるなら、働いた時間に対する収入は下がるかもしれません。
昇進を受ける前に、役職手当、残業代、休日対応、賞与の計算方法を確かめましょう。
詳しい確認項目は、管理薬剤師の年収相場と手当で解説しています。


会社が基本給や手当を見直す
会社が基本給を一律に引き上げることもあります。また、新しい手当が設けられれば、個人評価に関係なく月給が増えます。
物価上昇、人材不足、採用競争、最低賃金、診療報酬改定などが、会社の判断に影響します。
ただし、月給が増えていても、基本給ではなく調整手当だけが追加されている場合は注意が必要です。賞与や退職金の計算に含まれないことがあるため、給与明細の内訳まで見てください。
調整手当が付いている方は、薬剤師の調整給・調整手当の仕組みで、賞与や退職金の計算に含まれるかを確かめておきましょう。


転職先が経験や担当業務を給与へ反映する
今の会社で基本給の上限に達していても、転職先が管理薬剤師経験、在宅経験、新人教育などを給与へ反映することがあります。
ただし、本記事では転職による年収アップ方法までは扱いません。まずは、今の職場に昇給の見込みがあるかを判断することが先です。
今の職場で給料が上がるか確認する5つの項目
薬剤師は過去3年の基本給、昇給実績、評価反映、給与上限、昇進条件を確認して判断する。
「転職したいわけではない。ただ、このまま今の職場で働き続けてよいのか知りたい」という方も多いでしょう。
その場合は、求人を探す前に、現在の給与明細と勤務先の制度を見ます。年収の合計額だけでなく、基本給が上がっているか、人事評価が給与へ反映されているか、今後の上限はいくらかまで確かめてください。
1.過去3年間で基本給が上がっているか
過去3年分の給与明細や源泉徴収票を並べ、基本給の変化を見ます。
- 基本給はいくら増えたか
- 手当だけが増減していないか
- 賞与の支給額は安定しているか
- 残業代を除いた年収はいくらか
年収が増えていても、その理由が残業時間の増加なら、会社からの評価が給与へ反映されたとはいえません。
2.昇給制度ではなく実績を見る
就業規則に「昇給あり」と書かれていても、会社の業績などを理由に、何年も昇給していない場合があります。
上司や人事担当者への質問例は、次のとおりです。
今後の生活設計を考えたいので、一般薬剤師の直近の昇給実績と、基本給の上限を教えていただけますか。
給料について聞くことは、わがままではありません。今後も働き続けるかを決めるために必要な確認です。
3.人事評価が何に反映されるかを見る
評価面談で褒められても、基本給、等級、賞与のどれにも反映されなければ、収入は変わりません。
次の等級へ進む条件、給与へ反映される時期、現在足りない評価項目を聞きましょう。
次の等級へ上がるために、今の私に足りない項目は何でしょうか。達成した場合、基本給や賞与へどのように反映されますか。
明確な回答がなく、「会社の判断です」とだけ説明されるなら、成果を上げても基本給や賞与が変わらない制度なのかもしれません。
4.一般薬剤師の基本給に上限があるか
会社には、等級ごとの基本給を定めた給与表があります。一般薬剤師としての上限に近づいている場合、同じ役職のまま大幅に給料を上げるのは困難です。
これは能力不足ではなく、会社の給与制度によるものです。次の等級があるのか、管理職以外の昇格先があるのか、基本給の上限はいくらかを聞いてください。
5.昇進の時期と条件が決まっているか
「いずれ管理薬剤師を任せる」「新しい店舗ができたら薬局長を任せる」と言われている方もいるでしょう。
期待されているのはうれしいことです。しかし、昇進時期を決めないままでは、「次の店舗ができたら」と言われ続け、数年たっても役職が変わらないことがあります。
昇進予定の時期、必要な評価、役職手当、担当する業務まで具体的に聞いておきましょう。
- 過去3年間で基本給がいくら増えたか
- 一般薬剤師の基本給の上限はいくらか
- 昇進した場合、役職手当がいくら増えるか
この3つを比べ、次の評価まで待つ期限を決めましょう。
あわせて、今の年収や時給が、雇用形態、業種、年齢、勤務地、役職に対してどの程度なのかも見ておく必要があります。
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2026年調剤報酬改定で薬剤師の給料は上がる?
2026年の調剤ベースアップ評価料は全員一律ではなく、薬局の届出と対象条件で反映が決まる。
2026年の調剤報酬改定では、保険薬局で働く職員の給料引き上げを支援するため、調剤ベースアップ評価料が設けられました。
ただし、「2026年からすべての薬剤師の給料が3.2%上がる」と考えるのは正確ではありません。
すべての薬剤師へ一律に支給される制度ではない
厚生労働省は、40歳未満の薬局勤務薬剤師などについて、2026年度と2027年度にそれぞれ3.2%分の基本給引き上げを支援する考え方を示しています。
実際に調剤ベースアップ評価料を算定するには、薬局側の届出と給料を引き上げるための計画が必要です。そのため、年齢、雇用状況、勤務先の届出状況によって、給与への反映は異なります。
- 調剤ベースアップ評価料を届け出ているか
- 自分は給料が上がる対象に含まれるか
- 基本給と手当のどちらへ、何月から反映されるか
制度の対象や薬局ごとの違いまで知りたい方は、2026年調剤報酬改定で薬剤師の年収はどう変わるのかをご覧ください。


参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
今の職場で昇給を待つか、働く条件を見直すか
薬剤師は昇給条件と時期が明確なら待ち、評価や責任が給与に反映されないなら条件を見直す。
給料に不満があるからといって、すぐに転職する必要はありません。
今後の昇給条件が明確で、実際に基本給が上がっている会社なら、今の職場で評価や昇進を目指す選択があります。反対に、評価されても給与が変わらず、責任だけが増えているなら、仕事量を増やしても基本給が変わらない制度なのかもしれません。
| 今の職場で昇給を待ってよい状態 | 働く条件を見直した方がよい状態 |
|---|---|
| 過去3年間に基本給が上がっている | 3年以上、基本給がほとんど変わっていない |
| 昇格条件と時期が明確 | 昇給条件を会社が説明しない |
| 評価が基本給や賞与へ反映されている | 高い評価を受けても給与が変わらない |
| 半年から1年以内に昇進の予定がある | 昇進の話が何年も先延ばしになっている |
| 役職手当と担当業務が見合っている | 責任と業務量だけが増えている |
今の職場で昇給を目指してよいケース
次の等級へ進む条件が具体的で、半年から1年以内に給与へ反映される予定なら、次の評価時期までは示された条件に取り組んでよいでしょう。
評価面談では、目標、期限、給与への反映方法を聞き、話した内容を記録します。会社から示された条件を達成したのに何も変わらなかった場合は、その記録をもとに次の面談で説明を求められます。
今の職場だけに選択肢を絞らない方がよいケース
「店舗に欠かせない」「いつも助かっている」と言われるのに、基本給も役職も変わらない。言葉で評価されるのはうれしくても、それだけでは生活は変わりません。
後輩指導、シフト調整、在庫管理、クレーム対応まで任されているのに、役職も手当も付かない状態に納得できないのは、甘えではありません。
- 3年以上、基本給がほとんど上がっていない
- 評価と給与が結び付いていない
- 一般薬剤師の基本給の上限に達している
- 昇進できる役職が空いていない
- 半年以内の改善予定を説明してもらえない
複数の項目に当てはまる場合は、今の職場で待つ期限を決めます。半年以内に転職を考えており、条件が合う求人なら採用面接へ進みたい方は、他社の基本給、賞与実績、昇給額、役職手当を比べる段階です。
詳しい年収の比べ方は、薬剤師転職で年収を上げる方法で解説しています。


最初に行う3つのこと
給料が上がらないと感じても、最初から転職先を探す必要はありません。次の順番で調べれば、今の職場で待つ期限を決められます。
- 過去3年間の基本給、手当、賞与を見る
- 昇給実績、基本給の上限、昇進条件を会社へ聞く
- 半年から1年以内に給料が変わる予定があるかを判断する
給料が上がらない原因を、すべて自分の能力に結び付ける必要はありません。本人の努力で変えられる部分と、会社の制度で決まる部分を分けて考えてください。
薬剤師の給料と昇給に関するよくある質問
薬剤師の昇給は基本給・手当・評価制度・役職・勤務先の届出状況を分けて確認する。
求人票の「昇給あり」の意味や、手当だけ増えた場合の考え方など、今の職場で給料が上がるかを判断するときに迷う点へ回答します。
求人票に「昇給あり」と書いてあれば、毎年給料は上がりますか?
毎年必ず上がるという意味ではありません。
会社の業績や人事評価によって昇給しない年もあります。転職前なら過去の昇給実績、入社後なら給与明細で基本給の変化を見てください。
残業が増えて年収が上がった場合も昇給ですか?
基本給や固定手当が変わらず、残業代だけで年収が増えた場合は、一般的な意味での昇給とは異なります。
残業を減らせば収入も元へ戻るため、基本給と残業代を分けて見ましょう。
基本給が変わらず、手当だけ増えた場合も給料が上がったと考えてよいですか?
月給は増えていますが、長期的な影響は手当の種類によって変わります。
賞与や退職金の計算に含まれるか、異動や役職変更で外れる手当ではないかを確かめてください。
人事評価が高いのに昇給しないときは、何を確認すべきですか?
評価結果が基本給、等級、賞与のどこへ反映される制度なのかを聞きます。
人事評価と給与が連動していない会社では、高い評価を受けても収入が変わりません。
「次の評価で給料を上げる」と言われたまま変わらない場合はどうしますか?
前回の面談日、約束された条件、自分が達成した内容を記録し、次の面談で説明を求めます。
具体的な時期を示してもらえない状態が続くなら、待つ期限を決めましょう。
上司へ給料の話をすると、印象が悪くなりませんか?
昇給条件を聞くだけで印象が悪くなるとは限りません。
「給料を上げてください」と要求するより、「次の等級へ上がる条件と給与への反映時期を教えてください」と質問すれば、話の目的が伝わります。
管理薬剤師を打診されたら、手当以外に何を確認しますか?
残業代、休日の連絡、欠員時の対応、スタッフ管理、行政対応、賞与の計算方法を聞きます。
手当額だけでなく、増える業務と拘束時間を含めて判断してください。
2026年から薬剤師の給料は全員3.2%上がりますか?
全員一律ではありません。
対象者の条件があり、薬局側の届出も必要です。勤務先が調剤ベースアップ評価料を届け出ているか、自分が給料引き上げの対象かを聞いてください。
昇給すると言われたら、どのくらい待つべきですか?
昇給時期と条件が具体的なら、次の評価時期まで待つ選択があります。
時期を示してもらえない場合は、半年をひとつの区切りとして再度確認しましょう。
基本給の上限に達していると言われたら、もう昇給できませんか?
同じ等級のままでは、基本給が上がらないことがあります。
次の等級、管理職以外の昇格先、資格手当や職務手当の有無を聞いてください。昇格先も手当もなければ、今の会社で大幅な給料アップは望めません。
まとめ|薬剤師の給料が上がるかは会社の仕組みで判断する
薬剤師の給料は本人の努力だけでなく、会社の昇給制度、給与上限、役職手当によって決まる。
薬剤師の給料は、定期昇給、人事評価、昇進、手当、会社全体の基本給見直しなどによって上がります。
一方、長く働いて仕事が増えても、基本給が自動的に上がるわけではありません。
仕事や責任が増えているのに給料が変わらないと、「自分の評価が低いのでは」と考えてしまうものです。しかし、原因が基本給の上限、昇進先の不足、人事評価と給与制度の分離にあるなら、本人の努力だけでは変えられません。
- 過去3年間の基本給
- 人事評価が給与へ反映される仕組み
- 昇進の時期と役職手当
今の職場に昇給の仕組みがあり、条件と時期も具体的なら、次の評価時期までは昇給や昇進を目指してよいでしょう。
数年間基本給が変わらず、人事評価も責任も給与へ反映されないなら、同じ働き方を続けるだけでは収入が変わらないかもしれません。
転職を急ぐ前に、まずは今の年収や時給が雇用形態、業種、年齢、勤務地、役職に対してどの程度なのかを確認してください。
その結果と勤務先の昇給制度を比べたうえで、次の半年をどう過ごすか決めましょう。
薬剤師の給料についてあわせて読みたい記事
薬剤師は年収だけでなく、基本給、手当、昇給実績、役職条件まで比較して働く職場を選ぶ。
今の職場で昇給を待つか判断したあとは、年収だけで転職先を決める危険性や、各種手当の相場も見ておきましょう。給与条件を比べる際の見落としを減らせます。







