

儲かる薬局にしたい薬剤師
どうやら最近うちの会社の利益が減っているようなんです。
そのせいか、本社からいろんな指示が飛んできて忙しくなってしまいました。
薬局ってそんなに儲からないのでしょうか。儲かる薬局を作る方法を教えてください。

度重なる調剤報酬の改悪で薬局の利益が減っていることは間違いありません。
あなたが勤務している薬局も例外ではないでしょう。
せめて自薬局の状況については一般薬剤師でも知っておく必要がありますね。
薬局の経営について大学で学んだ方はほとんどいないでしょう。
社会人になってから初めて売上や費用、利益について知った方も多いはず。
管理薬剤師なら薬局の数字をよく見ていると思いますが、一般薬剤師だとなかなか数字に触れる機会が少ないと思います。
自分が働いている薬局の利益ってどのくらい出ているのか気になりませんか?
実は、薬局の利益構造を調べることは簡単です。
なぜなら、レセコンの数字を見れば状況がわかるからです。
本記事の内容
この記事では次のことがわかります。
- 薬局の収益構造が理解できる
- 売上が増えているのか減っているのか状況をつかめる

pharma_di(ファマディー)Follow @pharma_di
私は、全国に300店舗以上運営している大手調剤薬局チェーンの大型店舗で管理薬剤師をしています。
管理薬剤師歴は15年以上。現在は転職サイトの担当者と連絡をとりつつ、中途薬剤師の採用活動にも携わっています。
私が薬剤師採用のために連絡を取っている、≫おすすめの薬剤師転職サイト
面接をした中途薬剤師は軽く20人を超えました。
私は過去2回転職をしていて、1回目は大失敗。ブラック薬局で過ごした数年間は地獄そのもの。
ブラック薬局に入らない方法、そこから脱却した方法を他の薬剤師にも役立ててほしいと思い、当サイト「薬剤師のための転職ブログ・ファマブロ」を始めました。
このサイト内の記事は『過去2回の転職経験』と、『現在の薬剤師採用業務の経験と知見』を基に全て私が1人で書いています。
薬局で利益が出ているかどうかは、一般薬剤師にとっても重要です。
利益が出ないと昇給やボーナスは期待できません。
どうすれば利益が出やすい薬局になるのかよく知っておきましょう。
まず理解して欲しいのはこれだけです。
売上高-費用=利益
利益を増やすには売上を伸ばすか、費用を削るかです。
これが基本中の基本です。
上から処方せん受付を増やすようにと言う指示は、売上高を伸ばすため。
残業時間を減らせと指示は、費用を削るため。
どちらも会社の利益確保のための指示ということです。
売上高
売上高とは、文字通り売上の合計額です。
薬局の売上高は、調剤売上とその他売上(OTC、小分け、介護等)の2つに大きく分けられます。
調剤薬局だと、売上高の大部分は調剤売上が占めていると思います。
調剤売上
調剤売上とは、処方せん調剤に基づく売上のことを言います。
調剤薬局においては調剤売上が売上の大部分(95%近く)を占めています。
調剤売上はさらに薬剤料と特定保険医療材料料、技術料に分けられます。
薬剤料
薬剤料とは、調剤売上のうち薬剤(医薬品)の売上に関係する部分の売上金額のことを言います。
特定保険医療材料料
特定保険医療材料料とは、調剤売上のうちインスリン用の針などの特定保険医療材料に係る部分の売上金額です。
技術料
技術料とは、調剤基本料や地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算、調剤料、自家製剤加算、計量混合加算などの「調剤技術料」と、服薬管理指導料などの「薬学管理料」の合計額です。
調剤技術料一覧
- 調剤基本料1・2・3
- 特別調剤基本料
- 分割調剤
- 地域支援体制加算1・2・3・4
- 連携強化加算
- 後発医薬品調剤体制加算1・2・3
- 薬剤調製料(内服薬・頓服薬・外用薬・注射薬・内服用滴剤・湯薬・浸煎薬)
- 嚥下困難者用製剤加算
- 無菌製剤処理加算
- 麻薬等加算(麻薬、向精神薬、覚醒剤原料、毒薬)
- 自家製剤加算(内服薬・頓服薬・外用薬)
- 計量混合調剤加算(液剤・散剤・軟膏剤 )
- 時間外等加算(時間外、休日、深夜)
- 夜間・休日等加算
- 在宅患者調剤加算
薬学管理料一覧
- 調剤管理料(重複投薬・相互作用等防止加算・調剤管理加算・電子的保健医療情報活用加算)
- 服薬管理指導料(麻薬管理指導加算、特定薬剤管理指導加算1・2、乳幼児服薬指導加算、小児特定加算、吸入薬指導加算、調剤後薬剤管理指導加算)
- かかりつけ薬剤師指導料
- かかりつけ薬剤師包括管理料
- 外来服薬支援料1・2
- 服用薬剤調整支援料1・2
- 服薬情報等提供料1・2・3
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急時等共同指導料
- 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
- 経管投薬支援料
- 退院時共同指導料
その他売上
売上のうち、調剤売上以外の部分を言います。
主に、一般用医薬品の売上、他薬局への医薬品分譲の売上がここに含まれます。
OTC売上
一般用医薬品の売上高の合計額。
小分け売上
他薬局への医薬品の売上高の合計額。
売上原価
薬局における売上原価とは、調剤に使用した医薬品の仕入れにかかった費用のことです。
ある特定の期間内に購入した医薬品の金額ではありません。
ある特定の期間内に使用または販売した医薬品の仕入れにかかった費用のことをいます。
ある特定の期間内の売上原価はどのように計算すればよいのでしょうか。
売上原価は、「期首在庫」+「仕入高」-「期末在庫」で計算できます。
ここではわかりやすいように3月決算の会社を例にとって解説していきます。
期首在庫
期首在庫とは、期首時点での医薬品の在庫金額のことを言います。
3月決算の会社の場合、期首は4月1日。
4月1日の業務開始前の時点での在庫金額が期首在庫となります。
仕入高
仕入高とは、その期間内に購入した医薬品の購入額のことを言います。
4月1日から翌年の3月31日までに購入した医薬品の合計金額です。
期末在庫
期末在庫とは、期末時点での医薬品在庫金額のことを言います。
3月31日業務終了時点での医薬品の在庫金額です。
具体例で計算してみましょう。
4月1日から翌年3月31日までに購入した医薬品の合計額が3,000万円。
翌年3月31日時点での在庫金額が1,200万円だったとします。
この年度の売上原価を計算してみると次のようになります。
売上原価=「期首在庫」+「仕入高」-「期末在庫」
=1,000万円+3,000万円-1,200万円
=2,800万円
売上原価は2,800万円となります。
売上総利益
売上総利益=売上高-売上原価
利益を増やすには、売上高を増やすか売上原価を減らせばよいことがわかります。
調剤薬局が売上高を増やすために一番重要なのは、処方せんの受付枚数を増やすこと。
薬局の処方せん枚数・受付回数を増やせと言われて困っている調剤薬局の薬剤師向けに現役管理薬剤師が解説。うちの薬局では枚数・応需医療機関ともに13%増加しました。処方せん受付回数を増やす方法を11個紹介します。
次に重要なのが、売上原価を減らすことです。

売上原価を減らすためには、期末在庫を増やせばよいのですね?

確かに期末在庫が多ければ売上原価が小さくなります。
しかしそれは在庫を抱えているにも関わらず、帳簿上は多くの利益が出ていることになってしまい、それに伴う税金の額が増えてしまいます。

また、期末在庫が増えるという事はそれだけ多くの医薬品を購入しているということ。
医薬品の購入には消費税がかかります。無駄な在庫を抱えているということ。
使用期限切れや変質のリスクもありますから、出なくなった薬はなるべく他店へ引き取ってもらうのが良いでしょう。
調剤薬局での在庫管理には『在庫を適正量に保つ』ことと『品質を管理して保管する』という2つを同時に行わなければなりません。発注点を工夫して在庫量を適正に保ちつつ、品質を管理して保管する方法がわかります。
売上総利益は内訳として、薬剤による利益(薬価差益)と技術料による利益(技術料利益)に分けることができます。
技術料利益
技術料による利益(技術料利益)は技術料売上がそのまま利益となります。
技術料を算定するのに元手は必要ないので利益率は100%です。
技術料収入の増加はそのまま利益に直結します。
薬局経営では、技術料収入をどう増やしていくかが大事なポイントです。
薬価差益
薬剤による利益の計算は、薬剤料-薬剤売上原価で求められます。
(薬剤売上原価=期首の薬剤在庫+期中の薬剤仕入高-期末の薬剤在庫)
薬剤売上原価はその期間中にどれだけの薬剤を金額として使ったかを表しています。
薬価差益を増やすには薬価に対してどれだけ割り引かれた価格で卸から医薬品を購入するかにかかっています。
医薬品仕入高が大きい薬局の利益は薬価差益の影響を大きく受けます。
ただし、医薬品購入時の値引き率は悪化傾向ですから、薬価差益に依存せず、いかに技術料利益を増やしていくかが重要です。
販売費及び一般管理費(販管費)
薬局で言えば薬局を営業するのに必要な費用のうち、その材料となる薬の購入費以外の部分のことを指します。
給与、賞与、福利厚生費、広告宣伝費、旅費交通費、印刷費、消耗品費、水道光熱費、通信費、賃借料、雑費、販売促進費といったものがあります。
給与・手当
薬局で働く従業員の給料と手当の合計額です。
賞与
年2回従業員に支払われる賞与の額です。
毎月一定額を賞与引当金繰入額として費用に見積額を計上していきます。
これにより、賞与支払いのある月だけ大きく費用が増えてしまうということはありません。
福利厚生費
社会保険料の会社負担分、住宅手当、結婚祝い・出産祝いなどの慶弔見舞金、健康診断代、従業員忘新年会費用などの福利厚生にかかる費用です。
薬剤師が転職するときに福利厚生はどの程度考慮するべきかを知りたい方向けの記事です。薬局の福利厚生とは、薬局の福利厚生の例、大手と個人薬局の違いがわかります。ぜひご覧ください。
旅費交通費
他薬局への支援の際の交通費や宿泊費用などがここに含まれます。
車両費
社有車のガソリン代、車のリース代、自動車保険料、車検代、自動車税、メンテナンス費用など
修繕費
薬局の建物や調剤機器、パソコンなどの修理費用。レセコンやプリンターの保守料金も修繕費に入ります。
広告宣伝費
薬局の広告などにかかった費用
交際費
門前医療機関の医師との忘年会や新年会、お中元、お歳暮にかかった費用など
会議費
会議室を借りた場合の費用など
荷造発送費
薬局で言えば、不動となってしまった医薬品をグループ内の他薬局に送った場合にかかった費用などがここに入ります。
教育研修費
薬や疾患などの研修を行った際にかかった費用。
通信費
固定電話の料金、携帯電話の料金、切手代、インターネット通信料など。
薬剤師会に払う(法外な!)FAX手数料
水道光熱費
水道料金、電気料金、ガス料金、灯油購入費など
賃借料
地代家賃として薬局の家賃、薬剤師の借り上げ社宅費用などもここに含まれます。
印刷費
薬袋や薬情などを印刷するのに使用した用紙代やインクトナー代
消耗品費
事務用品の購入費用など
保険料
火災保険料・損害保険料・薬剤師賠償責任保険料など
租税公課
印紙税、固定資産税などの税金
薬剤購入の際に要した消費税の経理処理(税込経理時)
委託料
清掃業者、廃棄物処理業者、警備会社、社宅管理会社、事務作業等の外注費などが入ります。
雑費
販売費及び一般管理費のうち、勘定科目がなく重要性の低い少額な費用をまとめます。
減価償却費
金額の高い設備などの購入代金を費用として分割して計上していく(決まりがある)
営業利益
薬局が稼いだ利益のことです。
営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費(販管費)
売上総利益は、先ほどの式(売上総利益=売上高-売上原価)でしたから、まとめるとこうなります。
営業利益=売上高-売上原価-(販管費)
営業利益が-(マイナス)であったら赤字と言う意味です。
頑張って仕事をしても、利益が出ずに赤字だったらがっかりですね。
薬局の利益を増やす方法(まとめ)
薬局の営業利益を増やすには、売上高(特に技術料)を増やし、売上原価を減らし、販管費を減らす。
とにかく患者さんに処方箋を持って来てもらう。
加算の取り漏れを防ぐ
無駄な費用を削減する。
こういった基本的なことを意識していきましょう。
薬局の経費削減をしないといけない薬剤師向けに、かんたんにできる薬局の経費削減方法を解説。赤字を脱却して利益を確保すればあなたの評価は高まるはず。利益が出れば昇給や賞与(ボーナス)も期待できます。
そして勤務している薬局の収益構造と経営状況を確認しておきましょう。
薬剤師の人員削減の話が出たら、その薬局は経営的にかなり危険な状況です。
今のうちに経営がしっかりしている薬局へ移るのも手です。
他社に買収されると結構大変ですよ。
⇒M&A(買収と合併)をする調剤薬局とされる調剤薬局 調べる3つの方法
あなたが働いている薬局は買収・合併する側ですか?それともされる側ですか?もしあなたが買収・合併される側の薬局で働いているなら今後について考えてください。これから調剤薬局の大合併時代に突入します。この記事をよめば買収する側の薬局なのかされる側の薬局なのか調べる方法がわかります。
⇒あなたの薬局は買収する側の薬局ですか?それともされる側ですか?
別の会社と合併することになった薬局で働いている薬剤師向けの記事です。勤務先の薬局で合併や買収、売却の話が出たら確認すべきこと、薬局が買収・合併されたらこれから何が起きるか、経営者が変わると起こることがわかります。ぜひご覧ください。
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