調剤薬局向け医薬品在庫管理と発注点の設定方法【注意点も】
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調剤薬局で在庫管理に苦労している薬剤師

調剤薬局ではたくさんの薬を扱っていますが、在庫管理がなかなかうまく行きません。

どうすればよいでしょうか。何か注意点があれば教えてください。

この記事を読んでいただいているということは、医薬品の在庫管理についてお悩みなのでしょう。

欠品をさせてはいけないし、かといって在庫が多すぎると良くない。ちょうどよい在庫量を設定しておきたいと思うのも当然です。

最近は出荷調整で予定通りに薬が入荷されてきませんから、悩みの種が増える一方ですね。

今回は薬局の医薬品在庫管理についてお悩みの方向けの記事を書いていこうと思います。

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薬価改定前や棚卸前になると本部から圧力がかかります。

私も在庫管理の大変さが良くわかります。

本記事の内容
この記事を読むと次のことがわかります。

自己紹介

pharma_di(ファマディー)

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全国に300店舗以上運営している大手調剤薬局チェーンの大型店舗で管理薬剤師をしています。

管理薬剤師歴は15年以上。現在は転職サイトの担当者と連絡をとりつつ、中途薬剤師の採用活動にも携わっています。
【私が薬剤師採用のために連絡を取っている≫おすすめの薬剤師転職サイト

面接をした中途薬剤師は軽く100人を超えました。

私は過去2回転職をしていて、1回目は大失敗。ブラック薬局で過ごした数年間は地獄そのもの。

ブラック薬局に入らない方法、そこから脱却した方法を他の薬剤師にも役立ててほしいと思い、当サイト「薬剤師のための転職ブログ・ファマブロ」を始めました。

このサイト内の記事は『過去2回の転職経験』と、『現在の薬剤師採用業務の経験と知見』を基に全て私が1人で書いています。

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結論
薬局の在庫管理を適切に行うために最も大切な事は、薬局のスタッフ全員の意識を高めること。

スタッフ全員で薬の在庫を管理するということです。普段から在庫管理に注意をしておけば、棚卸前や薬価改定前に大変な思いをすることは無くなります。

薬局の医薬品を適正在庫に保つための在庫管理方法8選

薬局の医薬品を適正在庫に保つための在庫管理方法8選

薬局では医薬品在庫を適正量に保っておかなければならない理由が4つあります。

薬局で医薬品の在庫管理が重要な理由

  • 使用期限切れの防止
  • 薬価が下がった時の損失防止
  • 購入時の消費税負担軽減
  • 欠品の防止

欠品を防ぐために在庫を多くしすぎてしまうと、使い切れずに使用期限が切れる可能性が高まります。

さらに、2年に1回の薬価改定時には、薬価ダウンにより在庫している医薬品の価値が一晩で一気に目減りします。

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薬局薬剤師にとって、2年に1回の調剤報酬改定(薬価改定)は本当に頭の痛い問題ですね。

同じ薬なのに3月31日から4月1日へ日付が変わるだけで薬価が下がりますので、請求できる金額も下がります。ひどい話です。

加えてもう一つ大切なのは消費税。医薬品を購入する時に支払う消費税は、租税公課という項目に費用としてあがってきます。

費用が増えるということは利益が減るということ。

このような理由から、薬局で薬の在庫を多く持ちすぎるのは経営上良くないことなのです。

逆に在庫を絞りすぎても問題が起こります。欠品が続いて患者さんに迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。患者離れにつながることもあります。

しかも最近では出荷調整の医薬品が多く、在庫管理に多くの時間を取られている薬局も多いでしょう。

≫出荷調整医薬品の調べ方と対処法

医薬品の在庫を適正量に保つことは薬局の経営にとって大変重要であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

だから薬局の上層部から各薬局の責任者や在庫担当者に対し、とにかく在庫を圧縮せよとの指示が出るのです。

ではどのようにして薬局の医薬品を適正量に管理していけば良いのでしょうか。

その方法は以下の通りです。

調剤薬局の医薬品を適正量にする在庫管理方法

  • 各スタッフへの意識を高める
  • 小包装で頻回購入に切り替える
  • 3月中に使い切れない薬は返品する
  • 発注点を見直す
  • 動かなくなった薬は早めに処理する
  • バラ錠の購入を一時的にストップする
  • 余りそうな薬は小分けや分割購入で手当する
  • 無理なら薬局の品目別在庫金額トップ50だけでもちゃんとやる

薬の在庫管理に対するスタッフの意識を高める

調剤薬局で医薬品の在庫管理を適正に行うために最も重要なことは、薬局スタッフ全員の在庫管理に対する意識を高めること。

薬局責任者や在庫担当者だけが頑張っても、うまく行くことはまずありません。

薬局の医薬品在庫が多いとどのような弊害が起きるのか。この点を説明して薬局スタッフ全員で在庫管理をしていきましょう。

薬は小包装かつ頻回購入に切り替える

ここからは具体的な方法です。

医薬品の在庫金額を適正に保つためには、薬を購入する単位を小さくすることが大切です。

  • 1,000錠入りを購入していたのなら500錠入りに
  • 500錠入りを購入していたのなら100錠入りに
  • ツムラの漢方薬を189包入りで購入していたのであれば、これからは42包入りに

医薬品を普段から小包装で購入しておけば、万一処方が止まってしまった場合でも被害を最小限に抑えることができます。新規で薬を購入する際には「最小包装で」と卸に注文しましょう。

意外と知られていませんが、10錠入りや50錠入りなど、100錠よりも小さい包装で販売している医薬品も結構あります。

棚卸や薬価改定までに使い切れない未開封医薬品は卸に一旦返品する

卸さんには申し訳ないですが、棚卸や薬価改定までに使い切れそうもない未開封の医薬品は一度返品しましょう。

小包装で購入しておくとここでも役に立ちます。

いつも来ていた患者さんが来なくなったり、薬が変更になったりして薬の消費量が急激に減った場合でも小包装なら対応できますね。

医薬品の発注点を見直す

発注点の設定はどのように行っているでしょうか。

  • レセコンの在庫管理システムで自動的に発注している
  • レセコンとは別の在庫管理システムで自動的に発注している
  • 箱を開けたらその都度発注している

使っている在庫管理システムの性能に左右されてしまう部分ですので、何とも言えませんが高性能な在庫管理システムであれば全て自動で適正在庫に保つことが可能です。

在庫管理システムはレセコンから薬の出庫量を、卸から送信されてくるデータから入庫した薬の量をそれぞれ取り込み、発注点を割った医薬品のリストを提示してくれます。

在庫担当者はその医薬品のリストをそのまま卸に送信するだけ。これで在庫管理は完了です。

棚卸前や薬価改定前の時期には、この在庫管理システムの発注点の設定を少し厳しめに設定しておきましょう。

一つ発注点でよく問題となるのが、一包化で使用するバラ錠。

在庫管理システムがPTPとバラ錠を区別して管理してくれれば何の問題もありません。システムによってはPTPとバラ錠を区別できないものもあります。

こうなると一包化のために多くのバラ錠を購入している薬局は困りますね。

バラ錠についての詳細は後述しますが、この場合、棚卸前や薬価改定前にはバラ錠の購入をいったんストップすべきでしょう。

大変手間だとは思いますが、その期間だけはPTPを剥いて一包化調剤をするのが適切です。

動かなくなった薬は早めに処理する

医薬品の在庫管理システムには、不動品のリストを提示してくれる機能もあります。

例えば90日間と設定しておけば、90日以上処方出庫が無い医薬品のリストが出てきます。こういったものを活用して不動となった医薬品を早めにチェックできる体制を整えておきましょう。

不動となった医薬品は早めに他店に送れば期限切れを防げます。

但し、この機能は完璧なものではありません。

例えば100日前に100日分の薬を渡した場合でも、不動品のリストに載ってきてしまいます。じゃあもっと期間を長くすればよいかというとそうでもありません。

今度は不動品となったことに気づくのが遅れます。薬によっては期限が切迫している者もあるかもしれません。

1人にしか出ていない薬が処方変更になったら、すぐに他店へ移動できる体制を整えましょう。どの薬が1人にしか出ていないのかを知っておき、処方変更になったらすぐに情報を共有して他店に送る。

スタッフ全員で協力しないと在庫管理はうまく行きません。

バラ錠の購入を一時的にストップする

一包化調剤が多い薬局ではバラ錠を購入していると思います。棚卸前や薬価改定前にはバラ錠の購入をストップしましょう。

一般的に、バラ錠の包装はPTPよりも大きい単位での販売となっています。

バラ錠の購入は医薬品の在庫量を増やす要因。

在庫を絞る時期が来たらバラ錠の購入を段階に減らし、一包化調剤はPTPを剥いて対応しましょう。

最小包装で購入しても余ってしまう医薬品は小分けや分割購入をする

極端な例をあげてみます。

ある高薬価の医薬品の在庫が29錠あって、30錠処方が出ました。

ここで最小包装の100錠を購入してしまうと、99錠余ってしまいます。

しかもこの人にしか出ていない薬。

このような場合には、他店から1錠だけ購入するか卸の分割購入を利用しましょう。薬価や手間も考慮し、100錠を購入するのか他店から1錠だけ購入するのか、卸の分割購入を利用するのか決定します。

薬局の品目別在庫金額トップ50を調査

忙しくて、薬の在庫を詳しく見ている余裕はない。そんな方も多いでしょう。

そのような場合には、薬局にある薬を在庫金額順に並べて高い方から50種類程度だけでも頑張って管理してみましょう。

やみくもに在庫管理に取り組むよりもはるかに効率良く在庫金額を圧縮することができます。トップ50ができたらトップ100までと範囲を広げていってみましょう。

薬価が10円の薬と500円の薬。どちらの薬の在庫をよく見ておけば良いか。

それはもちろん薬価が500円の薬です。

高薬価の薬の在庫を減らすことができれば薬局全体の在庫金額に良い影響を与えることができますね。

10円の薬を100錠減らしても、その効果は1,000円。500円の薬を100錠減らすことができればその効果は50,000円です!

薬の在庫管理が比較的楽な薬局と大変な薬局

薬の在庫管理が比較的楽な薬局と大変な薬局

薬局で薬の在庫を持ちすぎるのは良くないので、しっかり在庫管理をしていきましょうとここまで書いてきました。

そうは言っても、薬の在庫管理が比較的楽な薬局と大変な薬局があります。在庫管理が楽な薬局にも大変な薬局にも、本部は同じように在庫管理を厳しくやるように言ってきます。

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これは本当に不公平です。

在庫管理が比較的楽な薬局

薬の在庫管理が比較的楽な薬局の特徴は次の通り。

  • 集中率の高い薬局(少ない品目で多くの患者さんの処方をまかなえる薬局)
  • 取り扱い品目数が少ない薬局
  • バラ錠、散剤、シロップの扱いが少ない薬局
  • 新患が少ない薬局

こういった薬局は、薬の処方量を予想しやすいという特徴があります。在庫管理が大変な薬局の分まで頑張ってみましょう。

全薬局でノルマは達成できなかったとしても、比較的在庫管理が楽な薬局が頑張ってくれると会社全体でノルマを達成することに貢献できるでしょう。

在庫管理が大変な薬局

在庫管理が大変な薬局の特徴は次の通りです。

  • 集中率が低い薬局(多くの医療機関の処方せんを受け付けていると薬の品目数が増えるのは必然です)
  • 不特定の患者がくる薬局(1回限りの患者さんが多いなど)
  • 一包化調剤が多い薬局(バラ錠の在庫が多い)
  • 散剤やシロップの調剤が多い(誤差が出やすい)
  • 薬価改定の時が忙しい薬局(特に耳鼻科の門前薬局。花粉症の時期と重なるので在庫を絞れない)

集中率が低く、多くの医療機関の処方箋を受けている薬局の在庫管理は本当に大変です。処方される薬の量を予想するのが困難ですから、在庫管理は難しいのは言うまでもありません。

とは言っても、適正在庫にすることは必要です。棚卸前や薬価改定前は前述した8つの項目をできるだけやっていきましょう。

医薬品在庫管理の注意点

医薬品在庫管理の注意点

薬局の在庫管理で重要なのは在庫の金額を減らすことと使用期限を切らさないことだけではありません。

適切に薬が保管がされているでしょうか。

麻薬は麻薬金庫へ。毒薬や向精神薬は鍵のかかる場所へ。冷所品は保冷庫へ。

真夏に調剤室の温度は30度を超えることはないでしょうか?

真冬に調剤室の温度が1度を下回ることは無いでしょうか?

インスリンを保管している保冷庫は2~8℃を保っているでしょうか。

≫【調剤室の温度管理】室温・冷所の基準と冷所保存が必要な医薬品一覧

こういった医薬品の管理の責任は管理薬剤師が負うものです。

だからといって管理薬剤師が全て目を光らせているのは無理な話。薬局スタッフに対して、教育を行うことが必要です。

調剤薬局向け正しい在庫管理と発注点の設定方法(まとめ)

調剤薬局向け正しい在庫管理と発注点の設定方法(まとめ)

薬局の医薬品在庫管理は、薬局経営上重要な位置づけです。在庫管理が上手な薬局では利益が出やすくなるのに対し、下手な薬局では期限切れ等による廃棄額が増えて利益が出にくくなってしまいます。

医薬品管理の8つの方法のうち、できることから取り入れていきましょう。

普段から医薬品の在庫管理をしっかりしておけば、棚卸前や薬価改定前に大変な思いをせずに済みます。

繰り返しになりますが、最も重要なのは薬局のスタッフ全員で在庫を管理していくこと

管理薬剤師や在庫担当者だけが頑張っても、在庫管理はうまくいくことはありません。

≫出荷調整医薬品の調べ方と対処方法