
5Sの最後に出てくる「躾(しつけ)」って、何をすればよいのでしょうか。大人のスタッフにしつけと言うのも抵抗がありますし、注意ばかりするのも気が引けます。
そう感じるのは当然です。
私も最初は「大人に対して躾と言われても……」と、正直ひっかかりました。
でも、薬局の5Sでいう躾は、スタッフを叱ることではありません。
躾とは、決めた戻し方・担当・確認の流れを、毎日続く形にすることです。
5Sが続かないのは、あなたの指導力が足りないからではありません。
忙しい薬局では、手順や担当があいまいなままだと、誰でも元のやり方に戻ります。
調剤台を戻す。薬品棚の置き場所を守る。清掃を終える。終業時に翌朝の形へ戻す。
一つひとつは小さな行動です。ですが、その小さな行動が毎日そろうと、探す時間、聞き直す時間、やり直す時間が減ります。
逆に、5Sが続かない薬局では「やり方」よりも「続け方」に問題があるケースが多いです。
チェック表を作ったのに、誰も見てくれない。結局、最後に調剤台を戻すのはいつも自分。新人や応援薬剤師が入るたびに、また同じ説明をしている。
注意したいわけではない。でも、そのままだと翌朝の自分が困る。そんな薬局は少なくありません。
この記事では、薬局の5Sにおける「躾=習慣化・定着化」をテーマに、失敗しやすいポイントと現場で使える進め方を解説します。写真基準、当番表、チェックリスト、月次確認、崩れた5Sの立て直しまで、実務で使える形に落とし込みます。
薬局の5Sにおける躾は、スタッフを叱ることではありません。
決めた戻し方・担当・確認表を、毎日続く形にすることです。
写真基準、当番表、チェックリスト、月1回の確認を組み合わせ、忙しい日でも翌朝の形へ戻せる薬局を目指しましょう。



私は管理薬剤師として25年、採用100名以上・面接500人以上を経験し、小規模薬局から大手チェーンまで運営・教育・現場改善を担当してきました。5Sの躾は「気合」ではなく「毎日戻せる流れ」で回ります。
実際に私が見てきた薬局でも、5Sが崩れるきっかけは大きな失敗ではありませんでした。多かったのは、ラベルの貼り替え忘れ、終業時リセットの担当あいまい化、新人への説明漏れです。
つまり、5Sを続けるには「もっと意識して」では足りません。誰が見ても同じ行動を取れるように、写真・担当・確認表を現場で使う形にしておく必要があります。
たとえば、ある薬局では終業時リセットの担当を決めていなかったため、最後に残った人だけが毎日片づけていました。完成写真と曜日当番を貼っただけで、翌朝の調剤台が安定しました。
5S全体の目的を先に確認したい方は、薬局で5S活動をやるメリットもあわせて読んでおくと、この後の話がつながります。


5S活動における躾(しつけ)とは習慣化・定着化
薬局の5Sにおける躾は、決めた基準を毎日続く行動へ変える段階。
5S活動における躾とは、決めたことを決めた通りに続け、薬局全体の当たり前にしていく段階です。
整理・整頓・清掃・清潔で作った形を、毎日の業務に落とし込みます。ここで初めて、5Sは「一度片づけた活動」ではなく「毎日続く仕事の流れ」になります。


たとえば、忙しい日のあとに調剤台が戻らない。分包紙の補充が人任せになる。薬袋の置き場が少しずつ変わる。
こうした小さな乱れを、毎日元の形へ戻す。これが、薬局の5Sにおける躾です。
躾は「大人をしつける」ことではない
「しつけ」と聞くと、上から注意するイメージが浮かぶかもしれません。
でも、薬局の5Sで使う躾は、スタッフを叱ったり押さえつけたりする意味ではありません。
むしろ、注意しなくても正しい行動を取れるように、見える形で残すことです。
調剤台の近くに「終業時の完成写真」があれば、どこまで戻せばよいかが一目でわかります。薬品棚に戻し位置のラベルがあれば、新人や応援薬剤師が迷う場面も減ります。
躾は「人を変える」のではありません。人が迷わず動ける流れを作ることです。
清潔で決めた形を、毎日続ける段階
5Sは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の順に進みます。
- 整理:必要なものと不要なものを分ける
- 整頓:必要なものを使う場所に置く
- 清掃:きれいにしながら異常に気づく
- 清潔:良い形を決めて保つ
- 躾:決めた形を毎日続ける
ここで要点になるのは、躾だけを単独で始めないことです。
何を残すのか。どこに置くのか。どう清掃するのか。どの形を「良い形」とするのか。
この前提がないまま「続けましょう」と言われても、現場は動けません。
躾は、5Sの「清潔」で基準を維持する方法を、日々の仕事へ落とし込む段階です。清潔の段階で完成形が決まっていないと、躾も形だけになります。


薬局で躾が重要な理由
薬局では、小さな乱れが大きな負担につながります。
薬品の位置が少し変わる。補充のタイミングが人によって違う。清掃チェックが空欄のまま残る。申し送りの書き方が人によって変わる。
一つひとつは小さく見えます。
でも、積み重なると「探す」「確認する」「聞き直す」「やり直す」が増えます。
忙しい薬局ほど、この小さなムダが残業や疲れにつながります。
だからこそ、躾では「ちゃんとやりましょう」で終わらせません。誰が入っても同じ形へ戻せるように、薬局の型を作ります。
型がある薬局は、新人薬剤師や応援薬剤師が入った日も大きく崩れません。スタッフ同士の確認も減り、患者対応に集中する時間が増えます。
薬局の5Sが定着しない原因
薬局の5Sが定着しない原因は、意識不足ではなく運用のあいまいさ。
「一度はきれいになったのに、気づいたら元通り」
薬局の5Sでは、よく起きます。
それは、スタッフの意識が低いからとは限りません。完成写真がない。担当が決まっていない。チェック表が古い。忙しい日の戻し方が決まっていない。
こうした運用の弱さが、5Sを少しずつ崩します。


私が見てきた薬局でも、最初に崩れるのは大きなルールではありませんでした。ラベルが古いまま残る。戻し位置が二重になる。チェック欄に空白が出る。写真と現物が合わなくなる。
この段階で直せば、すぐ戻せます。放置すると、元に戻すのに時間がかかります。
一度片づけて満足してしまう
5S活動でよくある失敗は、一度きれいにして終わってしまうことです。
棚をそろえる。不要品を捨てる。調剤台をすっきりさせる。ここまでは進みます。
問題は、その後です。
最初は全員が意識していても、繁忙期、欠員、応援勤務、監査対応などが重なると、少しずつ元の形に戻ります。
「今日は忙しいから、あとで戻そう」
「このくらいなら大丈夫だろう」
「前からこの置き方でやっていたし」
この小さな例外が続くと、いつの間にか薬局の守るラインが下がります。
躾では、例外を完全になくすよりも、崩れたあとに戻す手順を先に決めます。
完成写真や手順書がない
「きれいにしておいて」
「元に戻しておいて」
「使う場所に置いておいて」
この言い方、薬局ではよく使いますよね。
でも、人によって「きれい」「元通り」「使う場所」の判断は変わります。
調剤台の上に何を残すのか。分包紙は何個まで補充するのか。薬袋はどの向きで置くのか。棚の前出しはどこまで行うのか。
ここがあいまいだと、人によって仕上がりが変わります。
だから、躾では写真と手順書が欠かせません。言葉で何度も説明するより、完成形を見せた方が早く伝わります。
チェックリストが形だけになる
チェックリストを作ったのに、いつの間にか誰も見なくなる。
これも薬局ではよくあります。
毎日同じ項目にサインするだけ。確認していないのに丸を付ける。担当者が固定され、他の人は関心を持たない。チェック表が古いままで、今の薬局と合っていない。
こうなると、チェックリストは「確認する表」ではなく「記入する紙」になります。
チェック表は、項目を増やせばよいわけではありません。毎日見る項目は、最初は1〜2個で十分です。
清掃のやり方そのものを確認したい方は、薬局で清掃を定着させるコツを参考にしてください。この記事では、清掃チェックを毎日続ける流れに絞って解説します。


5Sが形だけになっているサイン
5Sは、崩れ始めてもすぐには目立ちません。
ただ、現場にはサインが出ます。
- ラベルが古いまま残っている
- 同じ物の置き場所が2か所ある
- チェック欄に空白が増えている
- 完成写真と実物が合っていない
- 「あとで戻す」が翌日まで残っている
- 片づけを毎回同じ人が引き受けている
このサインが出たら、スタッフを責める前に、写真・ラベル・担当表・チェック表を見直してください。
現場を見てきた経験上、ここで早めに手を入れた薬局ほど、5Sは戻ります。反対に「そのうち直る」と放置した薬局ほど、元に戻す作業が大がかりになります。
忙しい日の例外が通常運用になる
薬局には、どうしても忙しい日があります。
処方せんが集中する日。欠員が出た日。在宅対応が重なった日。発注や棚卸が重なった日。
そんな日に、5Sが少し崩れるのは仕方ありません。
問題は、崩れた形を戻さないことです。
忙しい日の例外が翌日も残り、そのまま新しい薬局の形になってしまう。これが5Sを壊します。
例外を認めるなら、戻すタイミングも決めておきましょう。
- 当日中に戻すもの
- 翌営業日の朝に戻すもの
- 週末にまとめて戻すもの
- 管理薬剤師が判断するもの
戻すタイミングが決まっているだけで、崩れた形がそのまま残る回数は減ります。
新人・応援薬剤師が入ると崩れる
新人や応援薬剤師が入るたびに、薬局のルールが崩れる。
これも、よくある悩みです。
置き場所、清掃手順、発注点、申し送り方法。毎回口頭で説明していると、どうしても抜けが出ます。
新人が悪いわけではありません。教える側も、毎回同じ説明で疲れているはずです。
新人教育全体の進め方は、新人薬剤師に薬局の基準を教える方法で詳しく解説しています。この記事では、新人にも5Sの戻し方を伝える方法に絞ります。


最初から分厚いマニュアルを渡す必要はありません。写真1枚、A4一枚の手順書、当番表、チェック表。これだけでも、現場の迷いはかなり減ります。
【薬局の5S活動】躾(しつけ)の正しいやり方
薬局の5Sの躾は、写真・担当・確認表を小さく回すことが基本。
5Sの躾は、全部を一気に変える必要はありません。
むしろ、一気に始めると現場が疲れます。まずは、崩れやすい場所を一つだけ選んでください。終業時の調剤台でも、薬袋の置き場でも、清掃チェックでも構いません。


薬局で5Sの躾を進めるなら、やることは大きく5つです。
- あるべき姿を写真で共有する
- 当番表とチェック表をセットで使う
- チェック項目は日次1〜2個に絞る
- 清掃チェックを記入だけで終わらせない
- 月1回、写真・表・ラベルを確認する
小さく始めて、続いたら広げる。この順番なら、翌日も同じ動きが残ります。
あるべき姿を写真で共有する
最初にやることは、薬局の「あるべき姿」を写真で残すことです。
言葉だけでは、人によって受け取り方が変わります。写真なら、完成形が一目で伝わります。
- 調剤台の終業時写真
- 薬品棚の正しい前出し
- 分包紙・薬袋・レジ袋の補充数
- 監査台の上に置いてよいもの
- 清掃用具の戻し位置
- 開局前に準備が終わっている形
写真があると、「どこまでやれば終わりか」がわかります。
口で毎回説明する回数も減ります。スタッフごとの判断の違いも減ります。
写真は一度作って終わりではありません。配置を変えたら撮り直す。今の薬局に合わなくなったら差し替える。これを月1回の確認に入れます。
当番表とチェック表をセットで使う
チェック表だけを作っても、誰がやるのかがあいまいだと続きません。
「誰かがやるだろう」は、たいてい誰もやらないまま終わります。
だから、当番表とセットにしてください。
- 朝:開局前チェック
- 昼:調剤台・薬袋・分包紙の補充確認
- 夕方:発注点・棚・清掃確認
- 終業時:調剤台リセット・ゴミ・冷所・施錠確認
担当者を固定しすぎると、その人が休んだ日に崩れます。
曜日ごと、時間帯ごと、スタッフごとに回す形が現実的です。
担当者が実施し、別の人が軽く確認する。この流れだけでも、チェック表が「記入する紙」で終わりません。
チェック項目は日次1〜2個に絞る
チェックリストは、細かく作りすぎると続きません。
項目が多すぎると、確認するだけで疲れます。忙しい日ほど、丸を付けるだけになります。
毎日確認する項目は、最初は1〜2個に絞りましょう。
最初の1か月は、次のような項目で十分です。
- 終業時、調剤台が完成写真の形に戻っているか
- 開局前チェックが決めた時刻までに終わっているか
それが続いたら、薬品棚、分包紙、薬袋、発注点、清掃、冷所、温度記録へ広げます。
最初から全部やらなくて大丈夫です。まずは一つ。終業時の調剤台だけでも、薬局の空気は変わります。
清掃チェックを記入だけで終わらせない
清掃は、5Sの中でも形だけになりがちな部分です。
「掃除しました」に丸を付けるだけでは、実際の形は見えません。
清掃チェックでは、行動ではなく結果を見ます。
- 床に薬包紙やラベル台紙が落ちていない
- 調剤台に粉や錠剤片が残っていない
- 分包機周辺に紙くずが残っていない
- 棚の前に段ボールや納品物が放置されていない
- 清掃用具が所定の位置に戻っている
「やったか」ではなく「終わった形になっているか」で見てください。
同じ表を使い続けると、慣れで見落としが出ます。月に1項目だけでも入れ替えると、スタッフの目が戻ります。
月1回、写真・表・ラベルを確認する
躾は、一度決めたルールを永遠に守ることではありません。
薬局に合わないルールは、残りません。
だからこそ、月1回は短い確認時間を作ります。
- 守れたルール
- 守れなかったルール
- 手順が伝わりにくい部分
- 写真と実物が合っていない部分
- 新人や応援者が迷った部分
この5つを確認すれば十分です。
守れなかった人を責めるのではなく、守れる形に直す。ここが定着への近道です。
崩れた5Sを立て直す手順
崩れた5Sは、範囲と期限を決めて写真・ラベル・表を一気に直す。
ここでは、すでに崩れてしまった5Sを元に戻す手順を解説します。
予防ではなく、立て直しの話です。5Sは、どれだけ丁寧に始めても崩れる日があります。
大切なのは、崩れたことを責めるより、早く元の形へ戻すことです。長く放置するほど、薬局の当たり前が変わってしまいます。
立て直しは、短く区切って行いましょう。だらだら続けるより、「今週で戻す」と期限を決めた方が現場は動きます。
期限を決めて一気に戻す
まずは、期限を決めます。
おすすめは1週間です。
「今週中に調剤台と薬品棚だけ戻す」など、範囲を絞って進めます。薬局全体を一度に戻そうとすると、通常業務に押されて終わりません。
私が現場で見てきた中でも、立て直しが進む薬局は、範囲を絞っています。調剤台だけ。薬袋棚だけ。終業時リセットだけ。
小さく区切ると、スタッフも「まずここを戻せばいい」と動けます。
写真とラベルを同時に直す
立て直しでは、写真だけを直しても足りません。
ラベルも一緒に直してください。
写真は新しいのに、棚のラベルが古い。戻し位置の表示が前のまま。これでは、現場がまた迷います。
写真の撮り直し、ラベルの貼り替え、チェック表の更新。この3つはセットで行います。
見た目が一気にそろうと、スタッフにも「薬局の形を戻した」と伝わります。
最後にビフォー・アフターを残す
立て直しの最後に、ビフォー・アフターの写真を残します。
これは、見栄えのためではありません。
次に崩れたとき、どこへ戻せばよいかをすぐ確認するためです。
また、スタッフにとっても「ここまで戻った」という実感が残ります。5Sは、変化が見えると続きます。
最後に、完成写真とチェック表を上書きします。古い写真や古い表を残したままにしないこと。ここまで行って、立て直し完了です。
薬局スタッフに5Sを定着させるコツ
薬局スタッフに5Sを定着させるには、注意ではなく困りごとから始める。
5Sを続けたいだけなのに、注意すると空気が悪くなる。
そう感じて、言い出しにくくなっていませんか。
薬局スタッフに5Sを定着させるには、「守ってください」から入らないことが要点です。
困りごとを一緒に減らすためのルールにすると、現場でも「それなら必要だ」と思ってもらえます。
注意ではなく、困りごとからルールを作る
いきなり「ルールを守ってください」と言うと、反発が出ます。
おすすめは、困りごとから始めることです。
- 薬袋が見つからない
- 分包紙の補充タイミングが人によって違う
- 棚の戻し位置が伝わっていない
- 終業時の片づけが特定の人に偏っている
- 新人に毎回同じ説明をしている
こうした困りごとを出し合い、「では、どうすれば迷わないか」を話し合います。
自分たちの困りごとを減らすルールなら、押し付けに見えません。
5Sが崩れると、真面目な人だけが損をする薬局になりがちです。だからこそ、特定の人の善意ではなく、薬局全体で戻せる流れに変えていきます。
口頭ではなく、見える形で伝える
薬局は忙しい職場です。口頭で伝えたルールは、どれだけ大事でも流れてしまいます。
だから必要なのが、見える形で残すことです。
- 見本写真
- 戻し位置ラベル
- 当番表
- 開局前チェック表
- 終業時リセット表
- 新人用の1枚手順書
見える形で残す目的は、監視ではありません。
迷う時間を減らすためです。
スタッフが毎回確認しなくても動けるようになると、指示する側も、指示される側もラクになります。
できた点を先に共有する
5Sの話し合いで、できていない点ばかり見ると空気が重くなります。
まずは、できた点を共有してください。
- 終業時の調剤台が写真通りに戻っていた
- 分包紙の補充忘れが減った
- 薬袋の場所を新人が迷わなかった
- 清掃チェックの空欄が減った
- 棚の乱れに早く気づいた
できたことを認めると、スタッフは「意味がある」と感じます。
注意より先に承認。指摘より先に共有。
これだけでも、5Sの話し合いは前向きになります。
物の5Sから業務の5Sへ広げる最初の一歩
物の5Sが整うと、業務のムダを見直す土台ができる。
調剤台や棚の置き場所が決まると、次に見えてくるのが「業務のムダ」です。
昔から何となく続けている作業。誰も見ていない紙の記録。担当者しか知らない発注メモ。
こうした業務も、5Sの考え方で確認できます。
ここでは業務改善の全体論ではなく、薬局の5Sとつながる部分に絞って解説します。
昔からの慣習を棚卸しする
まず見るのは、昔から何となく続いている作業です。
- 誰も見ていない紙の記録
- 二重で入力している表
- 目的があいまいな回覧
- 担当者しか知らない発注メモ
- 前任者から引き継いだだけの独自ルール
「なぜこの作業をしているのか」を説明できないなら、見直し対象です。
すべてをやめる必要はありません。回数を減らす。テンプレートにする。担当者を分ける。紙ではなく共有フォルダで管理する。小さく変えるだけでも、現場の負担は減ります。
目的が弱い作業をやめる・減らす
薬局では「念のため」の作業が増えがちです。
もちろん、安全に必要な確認は削ってはいけません。
ただし、目的が弱い作業まで増え続けると、スタッフの余力がなくなります。
余力がない薬局では、5Sは続きません。
だから、業務の5Sでは「やることを増やす」だけでなく、「やめることを決める」視点を持ちます。
- 目的が重なる確認をまとめる
- 手書きメモをテンプレートにする
- 紙の回覧を共有フォルダやチャットに移す
- 担当者しか知らない作業を手順書にする
- 毎日ではなく週1でよい作業を分ける
仕事を増やすための5Sではありません。翌日の自分とスタッフをラクにするための5Sです。
鑑査や発注も「人によって違う」を減らす
5Sの考え方は、鑑査や発注にも使えます。
鑑査では、確認する順番が人によって違うと、抜けや重複が出ます。発注でも、発注点や確認タイミングがあいまいだと、在庫過多や欠品につながります。
業務の5Sでは、こうした作業も「人によって違う」状態から「薬局で決めた流れ」に変えます。
- 鑑査の確認順を決める
- 疑義照会後の記録場所をそろえる
- 発注点を棚に表示する
- 在庫確認の曜日と担当を決める
- 申し送りの書式をそろえる
鑑査そのもののスピードや手順を深く確認したい方は、記事末の関連記事も参考にしてください。ここでは、5Sとして「確認の流れをそろえる」ことに絞ります。
薬局で使える5Sの躾チェックリスト
薬局の5Sチェックリストは、管理ではなく翌朝をラクにするために使う。
チェックリストと聞くと、「また仕事が増えるのか」と感じるかもしれません。
でも、ここで作るのは管理するための表ではありません。翌朝の自分をラクにするための表です。
全部を一度に使う必要はありません。今の薬局で一番崩れている場所を一つだけ選んでください。
終業時リセット
- 調剤台が完成写真の形に戻っている
- 監査台に不要な書類や薬袋が残っていない
- 使用済みラベル台紙・薬包紙・空箱が処理されている
- 清掃用具が所定の位置に戻っている
- 冷所・施錠・レジ・ゴミの確認が終わっている
調剤台・棚・薬袋・分包紙
- 調剤台に常時置くものが決まっている
- 薬品棚の戻し位置がラベルでわかる
- 薬袋のサイズ別置き場が決まっている
- 分包紙の補充数が決まっている
- 空箱や端数品の扱いが決まっている
清掃・温度記録・発注点
- 清掃場所と回数が決まっている
- 清掃後の形が写真でわかる
- 温度記録の担当と時刻が決まっている
- 発注点が棚または一覧でわかる
- 欠品・過剰在庫が起きたときの確認手順がある
新人・応援薬剤師向け確認
- 初日に見る5Sルールが1枚にまとまっている
- 調剤台・薬袋・分包紙・清掃用具の場所が写真でわかる
- 迷ったときに誰へ確認するか決まっている
- 応援者にも終業時リセットの完成写真を共有している
- 新人が迷った点を月1回の確認に反映している
月1回の確認
- 完成写真を更新した
- チェック表の項目を1つ見直した
- 守れなかったルールの理由を確認した
- 薬局に合わない手順を修正した
- 次の1か月で重点的に見る項目を決めた
5Sを進めても変わらない職場は、人員体制や会社方針の問題かもしれない
5Sで変わらない職場は、人員体制や会社方針も切り分けて考える。
ここまで、薬局で5Sの躾を定着させる方法を解説してきました。
ただ、正直に言うと、手順やチェック表だけでは解決しない薬局もあります。
人員不足が続いている。終業時リセットをする余裕がない。清掃や補充がいつも後回しになる。管理薬剤師や一部のスタッフだけが片づけを抱えている。
この状態で「5Sを徹底しよう」と言われても、苦しいですよね。
それは、あなたの努力不足とは限りません。人員体制や会社の方針など、自分だけでは動かせない原因があるかもしれません。
手順を決めても、人員不足で毎日崩れてしまう薬局もあります。その場合は、5Sのやり方だけでなく、人員不足で5Sが続かない薬局の判断基準も確認しておきましょう。


また、5Sのルールを決めても、人員不足や会社方針の都合でどうしても崩れる職場もあります。
自分の努力だけで変えられる範囲を超えていると感じるなら、今の職場を続けるべきか迷ったときの判断基準もあわせて確認してみてください。


すぐに転職を決める必要はありません。
まずは、薬局内で変えられる作業と、自分だけでは動かせない人員体制や会社方針を分けて考えることが先です。
「この薬局で働き続けてよいのか」「自分だけが無理をしていないか」を確認したい方は、下の診断で今の状態を整理してみてください。
今の職場を続けるべきか迷っていませんか?
「辞めたいけれど、本当に転職すべきかわからない」そんな薬剤師向けに、今の働き方を見直す必要度をかんたんに確認できます。
- 今の職場への不満を整理できる
- 転職を考えるべき状態か確認できる
- これから取るべき行動がわかる
登録不要・無料でかんたんに確認できます
職場を変える可能性も少し考えておきたい場合は、薬剤師転職サイトごとの強みを見ておくと安心です。連絡の頻度、正社員・パート・派遣への対応も比較できます。希望条件に合う相談先を知りたい方は、自分に合う薬剤師転職サイトを診断してみてください。
複数のサービスを比べてから考えたい方は、薬剤師転職サイトおすすめ比較も参考になります。いきなり登録先を決めるのではなく、比べてから選ぶ方が納得して動けます。
Q&A|躾(しつけ)と定着化に関するよくある質問
薬局の5Sの躾は、よくある疑問を解消しながら無理なく定着させる。
ここでは、薬局で5Sの躾を進めるときによく出る質問に答えます。
一般論ではなく、この記事の内容を補う形でまとめました。今の薬局で引っかかっている部分から確認してください。
Q1: 5Sの躾は具体的に何をすることですか?
決めた戻し方・担当・確認表を、毎日続く形にすることです。
写真基準、当番表、チェックリスト、月1回の確認を組み合わせ、誰が入っても同じ形へ戻せる薬局を作ります。
Q2: 躾はどれくらいで習慣化しますか?
まずは1か月を目安にしてください。
1か月間、同じ時間に同じ行動を繰り返すと、スタッフの動きがそろってきます。重点項目は1〜2個に絞ってください。
Q3: チェック表が形だけになる場合はどうすればよいですか?
項目を減らし、結果に直結する内容へ絞ります。
「掃除したか」ではなく「調剤台に粉や錠剤片が残っていないか」のように、終わった形で確認してください。毎月1項目を入れ替えると、見落としも減ります。
Q4: 忙しい日に5Sが崩れる場合は?
忙しい日に崩れる前提で、回復ルールを決めます。
当日中に戻すもの、翌営業日の朝に戻すもの、週末にまとめて戻すものを分けると、崩れた形が残りません。
Q5: 新人や応援薬剤師が入ると5Sが崩れる場合は?
新人用に、写真付きの1枚手順書を用意します。
調剤台、薬袋、分包紙、清掃用具、発注点など、迷う場所を写真で見せると伝わります。初日から「どこを見ればよいか」がわかります。
Q6: スタッフから反発が出る場合は?
「守ってください」から入らず、「何に困っているか」から始めてください。
探す時間が多い、片づけが一部の人に偏る、新人への説明が毎回大変など、現場の困りごとを減らすルールにすると「それなら必要だ」と思ってもらえます。
Q7: 小規模薬局でも5Sの躾は必要ですか?
必要です。
小規模薬局ほど、特定の人の経験や記憶に頼りがちです。少人数だからこそ、写真基準やチェック表を用意しておくと、休みや応援勤務の日も薬局の形を保てます。
Q8: 5Sを進めても職場が変わらない場合は?
人員不足や会社方針など、自分たちだけでは変えにくい原因があるかもしれません。
薬局内で変えられる作業と、人員体制や会社方針の問題を分けて考え、必要なら今の職場を続けるべきか整理してみましょう。
【まとめ】躾は「続ける仕組み」。薬局の基準を1か月で定着させよう
薬局の5Sの躾は、決めた基準を続ける仕組みとして育てる。
薬局の5Sにおける躾は、スタッフを叱ることではありません。
決めた戻し方・担当・確認表を、毎日続く形にすることです。


- 躾=決めた戻し方を毎日続く形にすること
- まずは完成写真で「あるべき姿」を見える化する
- 当番表とチェック表をセットで使う
- チェック項目は日次1〜2個に絞る
- 忙しい日の例外には回復ルールを作る
- 新人・応援薬剤師にも写真と1枚手順書で伝える
- 物の5Sから業務の5Sへ広げる
- 月1回、写真・表・ラベルを確認する
5Sは、一度片づけて終わりではありません。
毎日戻すからこそ、探す時間が減り、ミスの芽が減り、患者対応に集中する時間が生まれます。
まずは、終業時の調剤台写真を1枚撮るところから始めてください。
そこに当番表とチェック項目を1つ加えるだけでも、薬局の動きは変わります。
そして、手順を決めても人員不足や会社方針でどうしても崩れる場合は、自分だけを責めないでください。
薬局の中で変えられることと、職場環境として見直すべきことを分けて考えることも必要です。
まずは薬局の中でできる5Sを進める。それでも限界を感じるなら、今の職場を続けるべきか一度整理してみましょう。
あわせて読みたい関連記事
薬局の5Sをもう一段進めたい方は、以下の記事も参考にしてください。












